犬と猫の炎症性腸疾患(IBD)について|下痢や嘔吐が長く続く場合は要注意
- 2024年1月15日
- 病気について
下痢や嘔吐は犬や猫によくみられる症状の一つであるため、「うちの子はお腹が弱いから」と、その症状に慣れてしまう飼い主様も少なくありません。
しかし、消化器症状が長く続いていたり短期間に何度も繰り返したりしている場合は、炎症性腸疾患である可能性があります。
重度の場合は蛋白漏出性腸症を引き起こす恐れがあるため、早期発見・早期治療が大切です。
今回は、犬や猫の炎症性腸疾患について解説していきます。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
原因
はっきりとした原因はわかっていないものの、免疫学的反応や遺伝的要因、食餌や腸管内の細菌叢の影響など、複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられています。
症状
軽度の場合はほとんど症状がないこともありますが、典型的な症状としては食欲の低下や体重の減少、慢性的や下痢や嘔吐などが挙げられます。
また、重度の場合は血液中のタンパク質が腸管から漏れ出してしまう「蛋白漏出性腸症」を引き起こし、胸水や腹水が溜まって呼吸が苦しくなってしまうこともあります。
診断方法
炎症性腸疾患は原因がはっきりとしていないため、診断までにさまざまなステップを踏む必要があります。
まず、消化器症状を引き起こす原因は多岐にわたるため、はじめに糞便検査や血液検査、X線検査、エコー検査など、一通りの全身検査を行います。しかし、炎症性腸疾患の場合はここで診断がつかないため、抗生剤や療法食などを使った対症療法を行います。
一般的な消化器症状であれば快方へと向かうはずですが、炎症性腸疾患の場合はすっきりとは治らないため、診断のために病理検査を行います。
採材の方法は主に2種類あり、内視鏡を使うか開腹をして腸管の一部を採取し、より詳細な検査をします。
そしてこれらの結果をもとに、総合的に診断をします。
治療方法
炎症性腸疾患の治療は、ステロイド剤と免疫抑制剤の内服を中心に、抗生物質の内服や食事療法(低脂肪食への切り替え)を併用して行います。
しかし、炎症性腸疾患は完治が難しい病気であるため、生涯にわたって治療が必要になります。
予防法やご家庭での注意点
炎症性腸疾患は予防も難しいため、早期発見・早期治療が何よりも大切です。消化器症状は犬や猫に多くみられることから、つい様子をみてしまいがちですが、嘔吐や下痢が続くと脱水や蛋白漏出性腸症を引き起こす恐れもあります。そのため、消化器症状が続いている場合は、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。
まとめ
犬や猫の炎症性腸疾患は原因が複雑であるため、一般的な腸炎の治療には反応しません。しかし、なるべく早い段階で診断をして適切な治療を行うことで、重症化を防げる可能性が高くなります。
当院ではお腹を開かずに内視鏡を使った検査を行えるため、消化器症状が続いている場合やなかなかすっきり治らない場合などは、ぜひ一度ご相談ください。
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