【獣医師が解説】猫の急性腎障害に要注意!|早期発見で命を救う方法とは?
- 2024年10月21日
- 病気について
猫の急性腎障害(AKI)は、突然発症し、命に関わる深刻な病気の一つです。しかし、早期に発見し、迅速に適切な治療を行うことで、回復の可能性が大きく高まります。
今回は、猫の急性腎障害の原因や主な症状について詳しく解説します。
■目次
1.急性腎障害とは
2.急性腎障害の主な原因
3.急性腎障害の初期症状
4.急性腎障害の診断方法
5.急性腎障害の治療法
6.家庭でできるケアと注意点
7.予防法
8.緊急時の対応策
9.まとめ
急性腎障害とは
腎臓は、血液を濾過して体に不要な老廃物を尿として排出する重要な役割を担っています。また、体内の電解質バランスを整える働きもしています。
猫の腎機能の病気としては、急性腎障害(AKI)と慢性腎臓病(CKD)が挙げられます。
急性腎障害は、何らかの原因で腎臓の機能が数時間から数日という短期間で急激に低下する病気です。一方、慢性腎臓病は月単位から年単位でゆっくり進行していく特徴があります。
腎臓の機能が低下すると、体内に老廃物が蓄積され、結果として尿毒症を引き起こす可能性があります。そして、最悪の場合、命に関わる深刻な状況になることも考えられます。
特に急性腎障害は進行が非常に速いため、早期に治療を開始しないと命に関わるリスクが高まることがあります。
急性腎障害の主な原因
猫が急性腎障害を引き起こす原因には、さまざまなケースが考えられます。もし日常生活の中で以下のようなリスクに心当たりがある場合は、早めに動物病院で診察を受けることが大切です。
・中毒:ユリの花や、車の不凍液に含まれるエチレングリコール、さらには人間用の薬など、猫にとって有害なものを摂取することで中毒を引き起こすことがあります。
・感染症:細菌やウイルスによる感染が腎臓にダメージを与え、急性腎障害の原因となることがあります。
・尿路閉塞:結石などで尿の通り道が塞がれてしまうと腎臓に大きな負担がかかり、急性腎障害を引き起こすことがあります。
尿道閉塞についてはこちらで解説しています
尿路結石症についてはこちらで解説しています
・外傷:外からの強い衝撃やケガで、腎臓が直接損傷を受けることも原因になります。
・循環障害:ショック状態や重度の脱水が、腎臓への血流が妨げられ、腎機能が低下してしまういます。
・高カルシウム血症:血液中のカルシウム濃度が異常に高くなると、腎臓がうまく働かなくなることがあります。
・腫瘍:腎臓に腫瘍ができることも急性腎障害の原因のひとつです。
・先天性異常:生まれつきの腎臓の異常が、成長とともに症状を引き起こすこともあります。
急性腎障害の初期症状
急性腎障害の初期段階で見られる症状には、いくつかのサインがあります。これらの症状が見られ、さらに思い当たる原因がある場合は、早めに動物病院で診てもらうことが大切です。
症状が進行すると、猫がぐったりしてしまうこともあります。
・食欲不振:ごはんを食べる量が減る、まったく食べなくなることがあります。
・嘔吐:頻繁に吐くことが見られる場合、腎臓に問題がある可能性があります。
・多飲多尿または乏尿:水をいつも以上に飲み尿の量が多くなる、または尿の量が少なくなることがあります。
・無気力/活動量の低下:普段より元気がなく、動かないことが多くなるかもしれません。
・口臭:口からアンモニアのような独特な臭いがすることがあります。
・脱水症状:皮膚のハリがなくなる、または口の中が乾燥するなどの兆候が見られます。
・痛みの兆候:お腹に触られるのを嫌がる、または痛がるような仕草を見せることがあります。
急性腎障害の診断方法
猫の急性腎障害を診断する際には、まず問診で、飼い主様から最近の様子や気になる出来事を詳しく伺い、それに基づいて身体検査を行いって意識の状態や脱水の具合を確認します。
次に、血液検査を通じて腎臓の機能や電解質のバランスを調べ、他の臓器に異常がないかも確認します。
さらに、尿検査では、尿の濃さや成分を詳しく分析し、腎臓の働きをより深く評価します。最後に、レントゲンや超音波検査を行い、急性腎障害の原因となる病気や異常を特定していきます。
急性腎障害の治療法
急性腎障害は命に関わる可能性があるため、多くの場合、入院による治療が必要となり、まずは輸液療法で脱水を改善しながら、猫の状態や原因に応じて薬物治療が行われます。
重症で尿が出ない場合は、透析が必要になることもあります。
尿が出なくなると、老廃物が体内に蓄積し、状態が急激に悪化して命の危険にさらされるため、早期の治療開始が非常に重要です。
また、急性期を乗り越えても、腎臓のダメージが完全に回復せず、慢性腎臓病に移行することがあります。そうなった場合は、腎臓に配慮した療法食や薬を使いながら、継続的なケアを行う必要があります。猫が快適な生活を送れるよう、長期的なサポートが大切です。
家庭でできるケアと注意点
猫が急性腎障害と診断された場合、急性期には入院治療が必要ですが、治療が成功して退院した後は、ご家庭でのケアが大切です。以下の点に気をつけながら、猫の健康を見守りましょう。
・水分摂取量の管理
猫が1日にどれくらい水を飲んでいるかを記録しておくことが大切です。水を器に入れる前と取り替える前の量を測り、変化がないか確認しましょう。水を飲む量は、体調によって増減することがあります。
・食事の管理
腎臓に優しい療法食を与えることが大切です。療法食は動物病院で購入できますので、獣医師に相談して、猫に合ったものを選びましょう。
・投薬の徹底
複数のお薬を与えるのが難しい場合は、獣医師に優先順位を確認して、指示された重要な薬は必ず与えるようにしましょう。
・定期的な診察
急性期を乗り越えても、慢性腎臓病に進行することが多いため、定期的に動物病院で診察を受けることが大切です。獣医師の指示に従い、通院の頻度を守りましょう。
これらのケアは、必ず獣医師の指示に基づいて行うことが重要です。猫の健康状態を見守りながら、無理のない範囲で適切なケアを続けましょう。
予防法
猫の急性腎障害を予防するためには、いくつかのポイントに注意することが大切です。
まず、有毒な植物、特にユリなどの猫に害を及ぼすものは家に置かないようにしましょう。また、猫が水をしっかり飲めるよう、複数の水飲み場を用意して、いつでも水分を摂取できる環境を整えることも重要です。
定期的に健康診断を受けることも、早期に異常を見つけるための大切な手段です。さらに、環境の変化がストレスになることがあるので、引っ越しや家具の移動などがある時は、猫が安心できる場所を作ってあげると良いでしょう。
食事に関しては、人間の食べ物を与えず、腎臓に配慮した適切な食事を与えることが重要です。
緊急時の対応策
急性腎障害の疑いがある場合、自宅での対応では改善が見込めないため、様子を見ずにすぐに動物病院へ行くことが大切です。
まず、気になる症状が出た時間や様子をメモしておき、かかりつけの獣医師に電話で相談しましょう。
もし診療時間外や夜間であれば、救急病院を受診してください。移動の際は、猫をクレートに入れ、できるだけ安静にさせながら早めに病院に向かいましょう。
まとめ
急性腎障害は、命に関わる深刻な病気です。早めの対応が愛猫の回復に大きな影響を与えるため、あらかじめこの病気についての知識を持っておくことが大切です。
少しでも不安に感じたら、迷わず早めに動物病院を受診しましょう。
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