知らないと危険?愛犬・愛猫の抜け毛の原因について獣医師が解説
- 2025年7月10日
- 病気について
ソファや洋服にふわっと残る抜け毛を見つけて「うちの子、こんなに毛が抜けて大丈夫?」と不安になることはありませんか?特に春や秋の季節の変わり目には、抜け毛が増えて掃除もひと苦労という飼い主様も多いと思います。
犬や猫にとって、毛が抜けること自体はごく自然な現象です。しかし中には、病気が原因の“病的な脱毛”が隠れているケースもあり、注意が必要です。
今回は、正常な換毛と異常な脱毛の違い、受診の目安、家庭でできる抜け毛対策について詳しく解説します。
■目次
1.犬や猫の「正常な換毛」とは?|季節性の抜け毛について
2.注意したい「病的な脱毛」とは?|異常サインと主な原因
3.動物病院を受診すべき脱毛のサインとは?
4.ご家庭でできる抜け毛対策と日常のケア
5.よくある質問(Q&A)
6.まとめ|抜け毛を見逃さず、健康管理の一環に
犬や猫の「正常な換毛」とは?|季節性の抜け毛について
犬や猫には「換毛期」と呼ばれる毛の生え変わりの時期があり、春と秋の年2回、季節に合わせて古い毛が抜けて新しい毛が生え変わります。これは人間で言う“衣替え”のようなもので、体温調整のための自然な仕組みです。
また、犬種・猫種や毛質によって抜け毛の量やタイミングは大きく異なります。
<毛質による違い>
▼ダブルコート(柴犬、ゴールデン・レトリバー、マンチカンなど)
外側の「オーバーコート」と内側の「アンダーコート」があり、換毛期にはごっそり毛が抜けます。
▼シングルコート(プードル、マルチーズ、シャム猫など)
アンダーコートがなく、抜け毛が少ない傾向。換毛期も目立ちません。
<毛の長さによる違い>
▼長毛種(ペルシャ、ラグドール、コリーなど)
毛が長く、抜け毛が目立ちやすい。毛玉になりやすいため、こまめなケアが重要です。
▼短毛種(アメリカン・ショートヘア、ビーグルなど)
細かい毛が舞いやすく、家の中に散らばりがち。掃除に苦労することもあります。
このように、毛質・犬猫種ごとの特性を理解し、季節に応じたケアを行うことが大切です。
注意したい「病的な脱毛」とは?|異常サインと主な原因
正常な換毛と異なり、部分的に毛がごっそり抜ける、皮膚に赤みがある、かゆみが強いといった場合には、「病的な脱毛」のおそれがあります。
<主な原因として考えられるもの>
・皮膚炎・アレルギー性皮膚炎
花粉やハウスダスト、食事などのアレルゲンにより皮膚が炎症を起こし、かゆみや脱毛を伴います。
・ノミ・ダニなどの寄生虫感染
耳のまわりや後肢のつけ根などに脱毛が見られ、強いかゆみを訴えることもあります。
・内分泌疾患(例:甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症)
ホルモンのバランスが崩れると、左右対称の脱毛や毛のパサつきなどがゆっくりと進行します。
犬の甲状腺機能低下症についてはこちらから
犬の副腎皮質機能亢進症についてはこちらから
・真菌(カビ)感染
免疫力が下がっている猫や子犬・子猫でよく見られます。円形脱毛やフケ、かさぶたが特徴です。
・ストレス・過剰なグルーミング
環境の変化などによるストレスで、特に猫では自分の毛を舐めすぎて脱毛することがあります。
こうした脱毛のポイントは「抜け方の異常」と「皮膚の変化」です。見た目の違和感に気づいたら、放置せず早めの対応を心がけましょう。
動物病院を受診すべき脱毛のサインとは?
以下のような症状が見られる場合は、自然な換毛ではなく、何らかの異常があるおそれがあります。なるべく早めに動物病院を受診することをおすすめします。
・同じ場所に繰り返し脱毛がある
・皮膚が赤くなっている、かゆみが強い
・毛がベタつく、フケが多い
・かさぶたやただれがある
・左右対称に毛が薄くなってきた
・元気がない、食欲が落ちている
これらの症状が見られるときは、皮膚トラブルだけでなく、内臓疾患やホルモン異常が隠れている場合もあります。動物病院では、皮膚検査や血液検査、ホルモン検査などを行い、原因に合わせた治療を進めていきます。
ご家庭でできる抜け毛対策と日常のケア
抜け毛の悩みを軽減し、健康な被毛を維持するためには、日頃のケアがとても重要です。
・ブラッシング
毛質に合ったブラシで週数回〜毎日のケアを。毛玉の予防や血行促進にもつながります。
・シャンプー
皮膚に優しい製品を使い、必要な頻度で。洗いすぎはかえってトラブルの元になるため注意しましょう。
・栄養バランスの取れたフード選び
オメガ3脂肪酸、ビタミンA・Eなど、被毛や皮膚に良い栄養素を意識的に取り入れましょう。
・ストレス対策
安心して過ごせる静かな環境づくり、生活リズムの安定などが心の健康にもつながります。
日々のケアを通じて、異常の早期発見にもつながる観察習慣を意識しましょう。
よくある質問(Q&A)
Q:換毛期に向けて、何か準備しておくべきことはありますか?
A:こまめなブラッシング、空気清浄機の活用、掃除しやすいインテリアの工夫などが役立ちます。抜け毛が本格化する前に準備しておくことで、快適に乗り切ることができます。
Q:抜け毛に効くサプリメントやフードはありますか?
A:効果が期待できる製品もあります。オメガ3脂肪酸やスキンケアに配慮した療法食などが代表例です。ただし、体質や病歴により向き不向きがありますので、まずは獣医師と相談のうえ導入することをおすすめします。
まとめ|抜け毛を見逃さず、健康管理の一環に
抜け毛は、犬や猫にとって自然な現象であると同時に、健康状態を知るための大切なサインでもあります。正常な換毛なのか、それとも病気の兆候なのかを見極めるには、日々の観察と正しい知識が不可欠です。
「なんだか気になる」「この抜け毛は大丈夫かな?」と感じたら、どうぞお気軽に当院までご相談ください。飼い主様と一緒に、愛犬・愛猫の健康をサポートいたします。
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