1日5分でできる犬・猫の歯石予防|ホームケアと動物病院でのサポートについて
- 2025年7月14日
- 病気について
「口臭が気になる」「最近フードを食べづらそう」そんな様子に気づいたら、それは歯石によるトラブルのサインかもしれません。
犬や猫にとって、歯石はただの汚れではなく、歯周病や内臓疾患につながるリスクのある問題です。気づかないうちに進行してしまうことも多いため、日頃からのケアが非常に重要です。
今回は、歯石の基礎知識から、ご自宅でできる予防ケア、動物病院での処置までを、獣医師の視点から詳しく解説します。
■目次
1.歯石とは?|放っておけない口腔内のトラブル
2.なぜ歯石ができる?|原因と予防のポイント
3.動物病院で行う歯石除去|流れと注意点
4.自宅でできる歯のケア方法|1日5分からはじめる
5.よくあるご質問(Q&A)
6.まとめ|歯石予防は“毎日の少しのケア”が鍵です
歯石とは?|放っておけない口腔内のトラブル
歯石とは、歯に付着した歯垢(プラーク)が唾液中のミネラルと結びついて硬化したものです。数日で歯垢が歯石に変化するため、日々のケアを怠るとすぐに蓄積してしまいます。
歯石がたまると歯肉炎・歯周病を引き起こし、痛み・出血・口臭、さらには歯のぐらつきや抜歯が必要になるケースもあります。
<放置した場合の影響>
歯石を放置すると、口の中のトラブルだけでなく、歯石による菌が血液を通して全身に回り、心臓・腎臓・肝臓などの臓器に悪影響を及ぼすこともあります。
特に高齢の犬・猫は免疫力が落ちているため、歯石が原因で全身の健康に関わるリスクが高まります。
なぜ歯石ができる?|原因と予防のポイント
愛犬・愛猫の口の中に歯石ができる背景には、いくつかの要因があります。
・食べかすが歯に残る:フードの残りが歯垢となり、やがて歯石へと変化します。
・唾液の性質:唾液がアルカリ性に傾いていると、歯垢が石のように固まりやすくなります。
・歯並びや口の形:歯と歯の隙間が狭かったり、噛み合わせが悪かったりすると、汚れが溜まりやすくなります。
このような傾向は、ウェットフード中心の食生活や、小型犬、短頭種の猫などでもよく見られます。つまり、体のつくりや食事内容によって、歯石のつきやすさには違いがあるのです。
そのため、歯石を防ぐためには、毎日の歯磨きをはじめとしたご自宅でのケアがとても大切です。さらに、動物病院で定期的に歯の状態をチェックしてもらうことで、見えにくい部分の異常にも早く気づくことができ、トラブルの予防につながります。
動物病院で行う歯石除去|流れと注意点
歯石がすでに付着してしまっている場合は、動物病院での専門的な処置が必要です。ここでは、実際の歯石除去の流れや麻酔について、処置後の注意点もあわせてご紹介します。
<初診から処置までの流れ>
歯石除去を行う場合、まずは診察で歯や口腔内の状態をチェックします。
その後、血液検査などで全身状態を確認し、問題がなければ麻酔下でのスケーリング(歯石除去処置)を行います。
<麻酔の必要性と安全性>
スケーリングは細かい作業が多く、動物が動くとケガのリスクがあるため、基本的に全身麻酔下で行います。
近年では、事前検査の充実と麻酔管理の進歩により、安全性は大きく向上しています。
<処置後のケア>
処置直後は歯茎が敏感になっているため、数日は歯磨きを控え、柔らかいフードに切り替えましょう。痛みや違和感が落ち着いてきたら、少しずつご自宅でのケアを再開することが大切です。
自宅でできる歯のケア方法|1日5分からはじめる
歯石は、一度ついてしまうとご自宅で取り除くことができません。そのため、歯石になる前に歯垢を取り除くことが何よりも大切です。そこで、飼い主様が日常の中で無理なく続けられる、愛犬・愛猫の歯のケア方法をご紹介します。
<歯磨きの習慣化>
理想は毎日の歯磨きですが、いきなり毎日行うのが難しい場合は週2〜3回からでも十分に意味があります。最初は、口の周りや歯に触れられることに慣れてもらうところから始めましょう。
おすすめのステップとしては、
・指にガーゼを巻いて軽く歯に触れる練習をする
・ごほうびを活用して「楽しい時間」と感じてもらう
・徐々に専用の歯ブラシや歯磨きシートに切り替える
といったように、愛犬・愛猫のペースに合わせて段階的に慣らしていくことが大切です。
<歯磨きのやり方とタイミング>
歯磨きの時間帯は、食後や就寝前の落ち着いた時間帯がおすすめです。焦らず、優しく声をかけながら、次のポイントを意識してみてください。
・歯と歯茎の境目をなぞるように磨く
・力を入れすぎず、短時間で終える(最初は1分程度でもOK)
・歯ブラシが苦手な子には、シートや指サックタイプを活用する
また、含まれている成分によって中毒を引き起こす危険があるため、人間用の歯磨き粉は使わず、犬猫用の安全な歯磨きペーストを使うことも重要です。
<デンタルケア用のフードやおやつを上手に取り入れる>
歯磨きがどうしても難しい場合や、補助的なケアとして有効なのが、デンタルガムやデンタルおやつ、口腔ケアに配慮した療法食の活用です。噛むことで歯垢の付着を抑えたり、口内の環境を整えたりする効果が期待できます。
ただし、以下の点には注意が必要です。
・主食との栄養バランスが崩れないように量を調整する
・硬すぎるおやつは歯を傷めることがあるため、年齢や歯の状態に合ったものを選ぶ
・アレルギーや持病のある子には、事前に獣医師と相談する
このように「毎日少しずつ・無理なく・愛情をもって」行うケアが、歯石予防の鍵になります。はじめは短時間からでもかまいません。1日5分の習慣が、愛犬・愛猫のお口の健康を支える力になります。
よくあるご質問(Q&A)
Q:多頭飼いで生活環境が同じなのに、歯石のつき方に差があるのはなぜ?
A:体質や唾液の性質、歯並び、噛む力の違いなどが関係しています。環境が同じでも、個体差は大きいため、1頭ずつの状態に合わせたケアが大切です。
Q:麻酔が不安です。無麻酔で歯石除去はできますか?
A:基本的にはおすすめできません。無麻酔で行うと、動いたときに口の中を傷つける危険性があり、恐怖心やストレスを与えることも。安全性と効果を考えれば、麻酔下での処置が望ましいといえます。
まとめ|歯石予防は“毎日の少しのケア”が鍵です
犬や猫の歯石は、毎日のちょっとした習慣でしっかり予防できます。飼い主様がこまめにお口の中をチェックし、負担のない範囲でケアを続けることが、健康を守る一歩になります。
そして、必要に応じて動物病院での定期チェックや専門的な処置を取り入れることで、より安心して過ごすことができます。
今日から1日5分、愛犬・愛猫の歯のケアを始めてみませんか?
当院では、ケア方法のご相談も随時受け付けております。「うちの子に合った歯磨きのやり方が知りたい」など、些細なことでもお気軽にご相談ください。
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