猫に突然の麻痺が起きたら?原因・緊急度・治療の流れを獣医師が解説
- 2025年7月16日
- 病気について
いつも元気だった愛猫が、ある日突然足を動かせなくなった——。そんな状況に直面したら、戸惑いや心配でいっぱいになる飼い主様も多いはずです。猫の「麻痺」は命に関わる病気が原因であることもあり、早急な対応が必要な場合もあります。
今回は、猫の麻痺に関する主な原因や、受診のタイミング、治療の流れについて解説します。
■目次
1.猫に麻痺が起こる原因とは?
2.こんな症状がみられたら要注意|受診のタイミングと緊急度の見極め
3.治療の流れとその後のケア
4.まとめ
猫に麻痺が起こる原因とは?
猫の麻痺には主な原因がいくつかあります。発症の仕方や麻痺の部位によって疑われる疾患が異なるため、普段の様子との違いを丁寧に観察することが大切です。
<神経系の異常>
脊髄や脳に異常があると、前足や後ろ足、または両方に麻痺が起こることがあります。原因としては以下が代表的です。
・椎間板ヘルニア
背骨のクッション部分が飛び出し、神経を圧迫することで麻痺を引き起こします。
・脊髄損傷
事故や落下などの外傷によって神経が傷つき、麻痺が生じるケースです。
・脳梗塞
脳内の血管が詰まり、運動機能を司る部分がダメージを受けた結果、麻痺が現れることがあります。
これらはいずれも突然発症することがあり、早期の診断と治療がとても重要です。
<血栓による血流障害>
心臓病のある猫で特に注意が必要なのが「血栓塞栓症」と呼ばれる疾患です。これは心臓にできた血栓が流れ、後ろ足の血管をふさいでしまうことで、急な後ろ足の麻痺や強い痛みを引き起こします。
足先が冷たくなっていることが多く、緊急性の高い状態です。少しでも疑わしい症状があれば、すぐに動物病院を受診してください。
<外傷・腫瘍・感染症など>
次のようなさまざまな原因でも、猫に麻痺が生じることがあります。
・外傷:高所からの落下や交通事故による骨折や神経損傷
・腫瘍:神経の近くにできた腫瘍が圧迫を起こすケース
・感染症:猫白血病ウイルス(FeLV)や猫伝染性腹膜炎(FIP)など、神経に影響を及ぼす病原体
特に外に出る猫はリスクが高いため、より注意が必要です。
こんな症状がみられたら要注意|受診のタイミングと緊急度の見極め
以下のような症状が見られた場合は、早めの受診が推奨されます。
・突然足を引きずるようになった
・片足または両足が動かない
・足が硬直しているように見える
・触ると痛がる、または鳴き続ける
・足先が冷たくなっている
・立ち上がろうとしても立てない
<特に緊急性が高いケース>
後ろ足が急に動かなくなり、強い痛みや冷たさがある場合は、血栓塞栓症のおそれがあり一刻を争います。数時間以内の処置がその後の回復を左右するため、夜間であっても救急病院の受診を検討しましょう。
<無理に動かさないことが大切>
外傷や神経系の障害が疑われる場合、無理に歩かせたり動かしたりすると症状が悪化するおそれがあります。タオルや毛布などでやさしく体を支え、なるべく安静な状態で動物病院へ連れて行きましょう。
<動画を撮影しておくと◎>
麻痺の様子や歩き方などをスマートフォンなどで撮影しておくと、診察時に獣医師が状態を正確に把握しやすくなります。
治療の流れとその後のケア
猫の麻痺にはさまざまな原因があり、それぞれに応じた治療が必要になります。ここでは、病院で行われる検査や治療の流れと、回復期のケアについてご紹介します。
<診断のための検査>
猫の麻痺の原因を特定するために、病院では身体検査のほか、血液検査、X線検査、超音波検査、必要に応じてMRIなどの画像検査を行います。原因によって治療内容が大きく変わるため、正確な診断が重要です。
<治療法の選択肢>
診断結果に応じて、猫の状態や原因に適した治療法が選ばれます。
・血栓性疾患:抗血栓薬や点滴などで血流の回復を図ります
・神経損傷:消炎剤や手術、サポート的な治療が行われることもあります
・感染症:原因となる病原体に応じた薬剤を使用します
<ご自宅でのケアとリハビリ>
治療後は安静が基本ですが、回復に応じて獣医師の指導のもとで軽いリハビリ(マッサージや歩行練習)を取り入れることがあります。無理をさせず、猫のペースに合わせたケアが大切です。
<再発予防と日常での注意点>
麻痺の原因によっては、その後の生活の中で再発を防ぐための工夫が欠かせません。特に心臓病が背景にある場合は、症状が落ち着いたあとも投薬の継続と定期的な検診が重要です。
また、神経や筋肉への負担を軽減するためには、日常の生活環境にも配慮が必要です。たとえば以下のような工夫が効果的です。
・段差の少ないレイアウトにする
・滑りにくい床材を敷く
・適正体重を保つためのフード管理を行う
さらに、猫は痛みや違和感を我慢してしまう傾向があるため、飼い主様がふだんから動きや様子の変化に気づけるように、注意深く見守りましょう。
「いつもと少し違うかも」と感じたときに、すぐに相談できる動物病院をあらかじめ見つけておくと安心です。八幡みなみ動物病院では、猫の麻痺やその原因となる疾患についての診察・検査を行っております。気になることがあればぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
猫に麻痺の症状が見られたとき、それがどれほど緊急性のある状態かを、飼い主様だけで見極めるのは難しいこともあります。特に血栓が原因の場合は、わずかな時間の差がその後の経過を大きく左右することもあるため「少し様子を見よう」は避けて、できるだけ早めに動物病院を受診することが大切です。
発症時の様子や麻痺の出方を丁寧に観察し、動画に記録しておくことで、診察時に正確な判断につながることもあります。また、日ごろから信頼できる動物病院を把握しておくことで、いざという時にも落ち着いて対応することができます。
愛猫の変化にいち早く気づけるように、まずは普段の様子をよく観察することから始めてみましょう。
千葉県市川市大和田の動物病院なら「八幡みなみ動物病院」
医院案内はこちらから
診療案内はこちらから