猫の元気がない…それ“急性肝不全”かも?初期症状から治療・予防まで解説
- 2025年9月5日
- 病気について
「なんだか最近、元気がない」「ごはんの食べ方がいつもと違う」
そんなちょっとした変化が、実は命に関わる病気のサインかもしれません。
猫の急性肝不全は、肝臓の働きが突然大きく低下する、非常に緊急性の高い病気です。
ときには発症からわずか数日で重篤な状態に陥ることもあります。
今回は、猫の急性肝不全について、気づきやすい初期症状から、検査・治療・日常でできる予防の工夫までをご紹介します。
■目次
1.猫の急性肝不全とは?
2.早期発見のカギ|見逃されやすい初期症状
3.検査と治療の流れ
4.日常のケアと予防のヒント
5.まとめ
猫の急性肝不全とは?
肝臓は、体の中で重要な役割を担っている臓器で、次のような機能があります。
・栄養の代謝・貯蔵:タンパク質や糖分を体に必要な形に変えて蓄える
・解毒:アンモニアや薬剤など、有害な物質を分解して無毒化する
・胆汁の生成:脂肪の消化を助ける胆汁酸を産生する
これらの機能が急激に損なわれる状態が「急性肝不全」です。進行が非常に早く、重症化すると多臓器不全や神経症状を引き起こし、命に関わることもあります。
<急性肝不全の主な原因>
・薬物中毒:人間用の解熱鎮痛剤(アセトアミノフェンなど)の誤飲
・感染症:猫伝染性腹膜炎(FIP)や猫白血病ウイルスなど
・外傷:交通事故などによる肝臓の損傷
・胆管の閉塞:胆石や腫瘍により胆汁の流れが妨げられるケース
<発症リスクを高める要因>
・肥満:肝リピドーシス(脂肪肝)をきっかけに急性肝不全に至る場合もあります
・シャム猫:先天的な胆管の異常が報告されています
・多頭飼育環境:ストレスによる食欲不振が引き金になることもあります
急性肝不全は突然発症し、短時間で重篤化するおそれがあるため、日々の健康観察と予防的なケアが、命を守る大きな支えとなります。
早期発見のカギ|見逃されやすい初期症状
急性肝不全は、初期の症状がごくわずかな異変にとどまることが多く、見逃されがちです。
以下のように、時間とともに症状が進行していく傾向があります。
発症からの経過時間 |
主な症状 |
24時間以内 |
食欲の低下、水をよく飲む、隠れる、元気がない |
24〜48時間 |
嘔吐、歯ぐきが黄色っぽくなる、ふらつき |
48時間以降 |
白目や皮膚の黄疸、痙攣、意識がぼんやり、黒色便や吐血 |
特に「食欲がない+水分摂取の変化」が見られたときは、ただの体調不良と考えず、すぐに動物病院にご相談ください。夜間や休日であっても、迷わず救急対応のある病院を受診することが重要です。
検査と治療の流れ
猫の急性肝不全では、正確な診断と迅速な治療が何よりも大切です。わずかな変化を見逃さず、命を守るために、以下のような検査が行われます。
・血液検査:ALTやALPなどの肝酵素の数値を測定し、肝臓のダメージの程度を確認します
・超音波検査:肝臓の大きさや内部構造、胆管の異常などを詳しく観察します
・凝固系検査:血が止まりにくくなっていないか、出血のリスクを評価します
・アンモニア測定:体内にたまった有害物質が脳に影響を及ぼしていないかを調べます
治療では、猫の体にできるだけ負担をかけず、肝臓の回復を助けることを目指します。
・酸素療法:呼吸のサポートを行い、体への酸素供給を安定させます
・点滴治療:脱水や電解質の乱れを改善し、全身状態を整えます
・抗菌薬の投与:感染症の併発を防ぐために抗菌薬を使用します
・栄養補助:食欲がない場合には、鼻チューブを使って必要な栄養を補います
重症の場合には、血漿の輸血など、さらに踏み込んだサポートが必要になることもあります。
治療の選択は猫の状態に応じてひとつひとつ丁寧に判断していきますので、不安なことがあれば遠慮なくご相談ください。
日常のケアと予防のヒント
猫の急性肝不全は、ちょっとした誤食やストレス、生活習慣がきっかけで起こることがあります。だからこそ、毎日の暮らしの中でできる工夫がとても大切です。
<誤食・中毒を防ぐために>
猫は好奇心旺盛な動物です。思わぬものを口にしてしまわないよう、次のような対策を心がけましょう。
・人間用の薬は、猫の届かない鍵付きの棚に保管する
・紐やボタンなど小さな部品のあるおもちゃは、遊び終わったらしまう
・観葉植物や掃除用洗剤などの誤食にも注意する
<ストレスの少ない生活環境を>
猫は環境の変化や他の猫との距離感に敏感です。安心できる場所づくりが心の健康にもつながります。
・食事やトイレの場所は、猫同士の距離を2m以上あけて設置する
・ふだん隠れられるような安心スペースをつくる
・毎日のルーティンを大きく変えず、落ち着いた環境を保つ
<肥満を防いで楽しく体を動かす>
肥満は肝臓に負担をかけやすく、脂肪肝などのリスクにもつながります。
・理想体型(BCSスコア4/5以下)を維持する
・食事は体重1kgあたり1日60kcalを目安に
・毎日15分×2回を目安に遊ぶ時間を設ける
<定期健診で早めの変化に気づく>
肝臓の病気は、見た目に変化が現れにくいことがあります。定期的なチェックで早期発見につなげましょう。
・血液検査:半年に1回、ALT・ALPなど肝酵素のチェック
・超音波検査:1歳を過ぎたら、年1回を目安に
・尿検査:ビリルビンの値も、肝機能の目安になります
猫の健康を守るためには、日頃から少しの気配りを重ねていくことが大切です。日々の積み重ねが、病気の予防や早期発見につながりますので、できる範囲から始めてみてください。
まとめ
猫の急性肝不全は、気づいたときには手遅れになるおそれもある、非常に深刻な病気です。
しかし、毎日の観察と早期の受診、そして定期的な健康チェックによって、そのリスクを減らすことは十分に可能です。
「なんとなく元気がないかも」と思ったときこそ、迷わずご相談ください。万が一に備えて、緊急対応が可能な動物病院を事前に調べておくことも、いざというときの大きな安心になります。
愛猫の健康を守るために、今日からできる小さな工夫を、少しずつ取り入れていきましょう。
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