肥大型心筋症は、猫で特に多く見られる心臓病のひとつです。この病気は進行すると命に関わることもありますが、早期に発見し、適切なケアを行うことで猫の生活の質を維持し、健康的な日常を送ることが可能です。

今回は、猫の健康に深く関わる肥大型心筋症について、わかりやすく解説していきます。

■目次
1.肥大型心筋症とは？
2.肥大型心筋症の主な症状
3.どのような猫が肥大型心筋症になりやすい？
4.診断方法
5.治療法
6.予防と早期発見
7.まとめ

 

肥大型心筋症とは？

肥大型心筋症は、心臓を動かす筋肉（心筋）が異常に厚くなり、心臓全体のポンプ機能に負担をかける病気です。心筋が過剰に発達することで柔軟さを失い、血液を十分に体全体に送り出せなくなります。

その結果、全身の循環に支障をきたし、猫の健康にさまざまな悪影響を及ぼします。

 

肥大型心筋症の主な症状

肥大型心筋症の主な症状として、以下のような変化が見られることがあります。

・呼吸が速くなる、または口を開けて呼吸する
・動きが鈍くなり、遊ぶ時間が減る
・食欲が低下する
・いつもより長く寝ていることが増える

 

ただし、猫は体調の変化を隠すのが得意なため、こうした症状がわずかにしか表れない場合もあります。「なんだかいつもと様子が違う」と感じたら、その小さな違和感が病気のサインかもしれません。

特に、加齢による変化と見過ごさず、気になったときは早めに獣医師に相談することをおすすめします。

残念ながら、はっきりした症状が出た頃には病気がかなり進行しているケースも少なくありません。日頃から猫の様子をよく観察し、少しの異変も見逃さないことが、健康を守る第一歩です。

 

どのような猫が肥大型心筋症になりやすい？

肥大型心筋症はどの猫にも起こりうる病気ですが、特に以下のような条件に当てはまる場合、リスクが高まるため注意が必要です。

＜特定の品種＞

メイン・クーン、ラグドール、アメリカン・ショートヘアなどは発症しやすい傾向があります。

 

＜年齢＞

7歳以上の中高齢の猫はリスクが高まります。

 

＜体重＞

肥満は心臓に大きな負担をかけます。太りすぎないよう、日頃から体重管理を心がけましょう。

 

＜基礎疾患＞

すでに高血圧や甲状腺機能亢進症などの持病がある猫は、さらにリスクが高まります。

猫の甲状腺機能亢進症についてはこちらで解説しています

 

こうしたリスク要因を持つ猫は、日常的に様子を観察することが大切です。少しの変化にも気を配り、定期的に健康診断を受けることで、早期発見と対策が可能になります。

 

診断方法

肥大型心筋症の診断には、主に以下のような検査が行われます。

・レントゲン検査：心臓の大きさや形、そして肺の状態を確認し、心臓に負担がかかっていないかを調べます。

・心エコー検査（超音波検査）：心筋の厚さや心臓の動きなどを詳しく観察し、病気の進行具合や心臓の機能を評価します。

・血液検査：心臓に負担がかかっているかどうかを確認するために、特定の数値を測定します。また、他の病気の可能性も同時に調べることができます。

これらの検査結果と、猫の症状や日頃の様子を総合的に判断することで、より正確な診断が可能になります。

 

治療法

肥大型心筋症の治療は、症状を和らげ、病気の進行を遅らせることが目的です。

治療の中心となるのは薬物療法で、猫の状態に合わせてさまざまな薬が使われます。例えば、利尿剤は体内の余分な水分を排出し、心臓や肺への負担を減らします。

また、血液をサラサラにする薬は血栓の形成を防ぎ、血流を良くする効果があります。
さらに、心臓の負担を軽減する薬を用いることで、心臓の働きを助け、症状を抑えることができます。

それぞれの猫の病状や体質は異なるため、獣医師がその猫に合った最適な治療法を選びます。肥大型心筋症は完治が難しい病気ですが、適切な治療を続けることで、猫は良好な状態を維持し、穏やかな日常を送ることができます。

 

予防と早期発見

肥大型心筋症の予防や早期発見のために、飼い主様が日頃からできる工夫を４つご紹介します。

１．定期的な健康診断　
年に1～2回は獣医師に診てもらい、早期の異常発見につなげましょう。

２．呼吸数の観察
猫が休んでいるときに呼吸数を数えてみてください。1分間に30回以上の呼吸が見られる場合は要注意です。

３．活動量や食欲のチェック
急に元気がなくなったり、食欲が落ちたりしていないか日頃から気をつけましょう。

４．適切な食事と運動管理
肥満は心臓に負担をかけます。適正体重を維持するため、バランスのとれた食事と適度な運動を心がけましょう。

 

まとめ

肥大型心筋症は珍しい病気ではありませんが、早めに見つけて適切に治療すれば、多くの猫が元気な状態を保ちながら過ごすことができます。

日頃のちょっとした観察や定期的な健康診断が、愛猫との大切な時間を長く、安心して楽しむためのカギとなります。

もし少しでも気になることがあれば、どうぞ当院にご相談ください。大切な家族の健康を守るため、全力でサポートいたします。

 

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