愛猫の食欲不振、見逃せない危険信号?|原因と対処法を獣医師が解説
- 2024年10月18日
- 病気について
猫の食欲不振は、さまざまな病気のサインである可能性があり、もしそれが続いている場合は、健康に対する危険信号かもしれません。
愛猫がごはんを食べなくなったら、「そのうち食べるだろう」と軽視せず、何か深刻な病気が隠れているかもしれないと考えてみましょう。早期に原因を突き止め、必要な治療を始めることが大切です。
今回は、猫の食欲不振について、知っておくべき観察ポイントや、考えられる病気、特に注意が必要なサインについて詳しく解説します。
■目次
1.猫の食欲不振とは?気になるサインを見逃さないで
2.猫の食欲不振の一般的な原因とは?
3.食欲不振時の観察ポイント
4.猫の食欲不振への対処法|おうちでできるケアを試してみましょう
5.食欲不振を予防する方法|健康を守るためにできること
6.獣医師に相談すべき症状と状況|見逃してはいけない危険なサイン
7.まとめ
猫の食欲不振とは?気になるサインを見逃さないで
健康な猫はお腹が空いたら自然にごはんを食べ、1日に必要なカロリーをしっかりと摂取します。
しかし、食欲不振になると、ごはんに対する興味が薄れ、普段の食事量を食べなくなります。いつもの量を食べない場合、「最近食べていないな」と感じることが、食欲不振を判断するわかりやすいポイントです。
ただし猫には個体差があり、もともと食欲にムラがある場合もあるため、日頃からよく観察することが重要です。「なんだかいつもと違うな」と感じたときは、すぐに対応できるように準備しましょう。
特に、生後半年までの子猫が8〜12時間程度、また成猫が24時間以上何も食べていない場合は、すぐに対処が必要です。
猫の食欲不振の一般的な原因とは?
猫の食欲不振にはさまざまな原因があります。どのような理由で食べなくなってしまうのか、いくつかの一般的な原因を見てみましょう。
・ストレス:引っ越しや家族構成の変化など、環境の変化は猫にとって大きなストレスになります。このような状況で食欲が落ちることがあります。
・歯の病気:歯周病や歯の痛みがあると、ごはんを食べたくても食べられなくなることがあります。口に触られるのを嫌がったり、よだれを垂らしたりする場合は要注意です。
・消化器系の疾患:胃炎や腸炎、膵炎などの消化器系の病気が原因で、食欲がなくなることがあります。
・腎臓病:腎臓病が進行して尿毒症になると、食欲不振が見られることが多くなります。特に高齢の猫に多く見られる症状です。
・肝臓病:肝臓が肥大すると胃が圧迫され、食欲が減少することがあります。また、肝臓の機能が低下することで消化がうまくいかず、ごはんを食べなくなる場合もあります。
・感染症(ウイルス性、細菌性):感染症にかかると発熱やだるさ、消化器の不調から食欲が低下することがあります。
・がん:腫瘍が消化管を圧迫することで食欲が低下するほか、抗がん剤の副作用や治療によるストレスも食欲減少の原因になることがあります。
・薬の副作用:痛み止め、ステロイド、抗生物質などの薬の副作用で、食欲不振が起こることがあります。
・食事の問題:急なフードの変更や、猫の好みに合わないフードは、食欲の低下を引き起こすことがあります。新しいフードに変えたい場合は、少しずつ混ぜて徐々に新しいフードの割合を増やす方法を試してください。
・高齢:歳をとると、代謝や運動量が落ち、自然と食欲も減少することがあります。しかし、急な食欲低下が見られた場合は、何か病気が隠れている可能性もあるため、注意が必要です。
食欲不振時の観察ポイント
愛猫の食欲不振が続くときは、次の観察ポイントをチェックして、獣医師にしっかり伝えるようにしましょう。
・食べ方の変化:食事量や食べる速度、食事のタイミングに変化がないか観察しましょう。いつもよりゆっくり食べている、食事に興味を示さなくなったなど、小さな変化も見逃さないようにしてください。
・水分摂取量の変化:水の飲む量も重要です。飲む量が減っていないか、逆に増えていないか確認しましょう。毎朝決まった量の水をボウルに入れ、翌朝に残った分を量ることで、一日に飲んだ水の量を推測できます。
・体重の変化:体重は健康のバロメーターです。簡単な方法として、飼い主様が猫を抱っこして体重計に乗り、次に飼い主様だけが乗った数値を引くことで、猫の体重がわかります。定期的に測定して変化をチェックしましょう。
・行動の変化:元気がない、隠れてしまうなど、普段と違う行動が見られたら注意が必要です。痛みや病気のサインであることがあります。
・他の症状:嘔吐、下痢、便秘などがないかも確認しましょう。これらの症状が見られる場合、原因の病気を特定する手がかりになります。
猫の食欲不振への対処法|おうちでできるケアを試してみましょう
食欲不振の猫に対して、病気が原因でない場合、次のようなおうちでできる対処法を試してみてください。
<ウェットフードを取り入れる、または少し温めて与える>
ウェットフードは匂いが強く、食欲を刺激しやすいです。少し温めてあげるとさらに香りが引き立ち、興味を持つかもしれません。
<食事場所の見直しや食器の変更>
猫が落ち着いて食べられる静かな場所で食事を与えてみましょう。また、食器の高さや形が食べにくさを感じさせている場合もありますので、食べやすそうなものに変えてみるのも一つの手です。
<少量で頻回の食事を試してみる>
1回の量を少なめにして、回数を増やすことで食べやすくなることがあります。
<食事の時間帯を変えてみる>
いつもと違う時間にごはんを出してみると、興味を示すことがあります。愛猫の様子を見ながらタイミングを工夫してみましょう。
<ストレス要因の除去>
環境が原因で食欲が落ちている場合は、猫がリラックスできる隠れ場所を用意し、フェロモン剤を使うなどして、安心できる環境作りを心がけましょう。
これらの対処法で症状が改善することもありますが、改善が見られない場合は、早めに獣医師に相談しましょう。
食欲不振を予防する方法|健康を守るためにできること
猫の食欲不振を防ぐために、日頃から以下のポイントに気をつけておくことが大切です。
<定期的な健康診断>
病気の早期発見や予防のために、定期的に獣医師による健康診断を受けることをおすすめします。普段からの健康管理が、食欲不振の予防につながります。
<適切な食事管理>
猫の年齢や体調に合ったフードを選び、急な変更は避けましょう。フードを変えるときは少しずつ新しいフードを混ぜていくなど、慎重に進めることで猫がスムーズに受け入れやすくなります。
<ストレス軽減>
引っ越しや新しい家族が増えるなど、環境の変化がある場合は、猫のストレスを軽減する工夫をしましょう。隠れ場所を用意する、静かな時間を作るなど、猫が安心できる環境を整えてあげることが重要です。
<歯のケア>
歯周病などの口内トラブルは食欲不振の原因になります。定期的に歯磨きをして、口の健康を保つように心がけましょう。
<十分な水分摂取>
水分が不足すると食欲に影響することがあります。新鮮な水を常に用意し、飲みやすいように工夫しましょう。水飲み場を増やし、水を流すタイプの水飲み器などを使うのも効果的です。
獣医師に相談すべき症状と状況|見逃してはいけない危険なサイン
猫の健康状態が悪化する前に、早めの対応が大切です。以下のような症状や状況が見られた場合は、緊急で獣医師の診察が必要です。
・24時間以上何も食べない(子猫は8〜12時間)
・急激な体重減少(10%以上)
・1日に何回も吐く
・下痢が数日間続いている
・呼吸が速くなる、または困難
まとめ
猫の食欲不振はよく見られる不調の一つですが、緊急性の判断が難しいこともあります。
ちょっとした変化も見逃さず、早めの対処が愛猫の健康を守る第一歩です。困ったときは、迷わず獣医師に相談しましょう。
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