犬の血尿の色でわかる原因と緊急度|正しい見分け方と対処法
- 2025年12月26日
- 病気について
愛犬のおしっこに赤みが混じっているのを見つけると「ケガをしたのかな?」「病気だろうか…」と心配になる一方で、元気があると様子を見てしまう方も少なくありません。
しかし、血尿は膀胱炎などの軽い炎症から、腎臓や腫瘍などの深刻な病気まで、さまざまな原因で起こるサインです。早めに原因を調べることで、重症化を防げるケースも多くあります。
今回は、血尿の色や状態から考えられる原因・緊急度の見分け方・受診の目安について詳しく解説します。

■目次
1.犬の血尿とは?色や見え方の違いに注意
2.血尿の主な原因
3.ご自宅での観察ポイントと受診の目安
4.動物病院で行う検査と治療の流れ
5.まとめ
犬の血尿とは?色や見え方の違いに注意
血尿とは、尿に血液が混じって赤く見える状態を指します。一見すると単純な「赤いおしっこ」ですが、実は血の混じり方や色の違いが、出血している部位や原因を見分けるヒントになります。
・鮮やかな赤色:膀胱や尿道など、下部尿路からの出血が多い
・ピンク色・薄い赤色:軽い炎症や一時的な刺激による出血の可能性
・茶色・赤黒い:腎臓など上部尿路のトラブル、または全身的な病気の疑い
ただし、見た目だけで原因を特定することはできません。尿のpH(酸性・アルカリ性)や細胞成分、細菌の有無などを検査で確認することが大切です。
血尿の主な原因
血尿の原因は幅広く、部位や性別によっても異なります。主なものを順に見ていきましょう。
・膀胱炎(最も多い)
細菌感染などにより膀胱に炎症が起こる病気です。頻尿や排尿時の痛み、尿のにおいの変化などを伴います。比較的治療しやすい病気ですが、放置すると慢性化することもあります。
・尿路結石
尿の中のミネラルが結晶化し、結石となって尿道を刺激します。おしっこが出にくい、少量ずつしか出ないなどの症状があり、詰まりを起こすと命に関わることもあります。
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・腎臓のトラブル(腎炎など)
腎臓に炎症が起こると、血液が尿に混じるほか、発熱や元気消失を伴うことがあります。茶色っぽい尿が特徴で、全身の不調としてあらわれるケースもあります。
・前立腺疾患(オス)
高齢のオスの犬に多く、尿に血が混じるほかに、排便時に痛がる、腰を気にするなどの症状が見られます。
・子宮蓄膿症(メス)
避妊をしていないメスの犬に起こりやすく、膿や血が混じるほか、元気・食欲の低下や発熱を伴います。放置すると命に関わる緊急疾患です。
・腫瘍や全身性疾患
慢性的・再発性の血尿の場合、腫瘍や血液の異常などが関係していることもあります。貧血、体重減少、食欲不振などが併発する場合は注意が必要です。
「元気だから大丈夫」と思っていても、体の中で異常が進行しているケースがあります。症状が軽く見えても、早めに動物病院に相談することをおすすめします。
ご自宅での観察ポイントと受診の目安
血尿が見られたら、まずは落ち着いて観察してみましょう。その記録が、診察の際にとても大切な手がかりになります。
<観察のポイント>
以下のような点に注目して確認してみてください。
・尿の色・回数・量・におい(できれば写真や動画を記録)
・排尿時の様子(痛がる・しゃがむ時間が長い・頻繁にトイレに行く)
・元気・食欲・水を飲む量の変化
<受診を急ぐべき症状>
次のような場合は、命に関わるトラブルが隠れているおそれがあるため、すぐに動物病院へご相談ください。
・おしっこが出ない、または少量しか出ない
・鮮血や赤黒い尿が続く
・発熱、ぐったりしている、嘔吐など全身の症状を伴う
・血尿を繰り返す、治療しても再発する
血尿は「すぐに命に関わる症状」と「経過観察でよい症状」が見た目では区別しにくいため「いつもと違うかも」と感じた段階で、早めに相談していただくことが大切です。早期に原因を見つけることで、治療の選択肢が広がり、愛犬の体への負担を少なくできる場合もあります。
動物病院で行う検査と治療の流れ
血尿の背景には、膀胱や腎臓のトラブルだけでなく、全身の病気が関係していることもあります。そのため、表面的な症状だけでなく、体の内側で起きている変化を総合的に見ていくことが大切です。
<診断の流れ>
血尿の原因を正しく特定するために、体全体の健康状態を丁寧に確認していきます。
▼問診と身体検査
まずは、飼い主様からこれまでの経過を詳しく伺い、排尿の様子や生活環境を確認します。
いつから血尿が見られたか、食欲や元気の有無、他の症状がないかなど、飼い主様が感じている小さな気づきも、診断の重要な手がかりになります。
▼各種検査
問診と身体検査の情報をもとに、以下のような検査を組み合わせて行います。
・尿検査:赤血球や結晶、細菌の有無を確認
・血液検査:腎臓や肝臓の働き、炎症の有無を調べる
・画像検査(レントゲン・エコー):結石や腫瘍の有無、膀胱や腎臓の形状を確認
当院では、検査の際にも愛犬の負担をできる限り少なくしながら、原因の見極めに必要な情報を丁寧に集めることを心がけています。
<治療の一例>
検査結果をもとに、原因や症状に合わせて最適な治療を行います。
・膀胱炎:抗生剤や消炎薬の投与、水分補給による尿路洗浄
・尿路結石:食事療法または外科的な除去
・腎疾患・腫瘍:点滴治療や投薬など、全身の管理を中心とした治療
当院では、症状の背景にある原因を一つずつ丁寧に見極め、検査結果だけでなく、年齢・体調・生活環境にも配慮した治療をご提案しています。飼い主様のお話をじっくり伺いながら、治療方針を相談し、安心して治療に臨めるようにしっかりサポートいたします。
まとめ
血尿は、軽い膀胱炎から命に関わる病気まで、さまざまな原因で起こります。色や量、頻度の違いは大切な情報ですが、見た目だけで判断するのは難しい症状です。
「少し赤い気がする」「また出たかも」と感じたら、早めに受診して検査を受けましょう。
八幡みなみ動物病院では、原因を丁寧に見極め、再発を防ぐための治療とケアを行っています。気になる変化があれば、いつでもご相談ください。
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