【獣医師監修】犬猫の下痢が続くときの原因と対処法
- 2025年4月11日
- 病気について
愛犬や愛猫の下痢が続くと、飼い主様は不安でいっぱいになりますよね。消化器の不調は、愛犬や愛猫が苦しむだけでなく、飼い主様にとっても心配やストレスの原因となるかと思います。
しかし、下痢の原因は様々で、その性質や原因に応じて適切な治療法が異なります。また、犬と猫ではその原因や特徴が異なる場合もあるため、それぞれの特性を理解しておくことが重要です。
今回は、犬猫の下痢について詳しく解説するとともに、対応のポイントをお伝えします。
■目次
1.下痢の種類と特徴について
2.犬の下痢が続く主な原因について
3.猫の下痢が続く主な原因について
4.すぐに受診が必要な症状
5.ご家庭でできるケアと予防法
6.まとめ
下痢の種類と特徴について
下痢は便の性状や発症期間によって分類されます。
<便の性状>
・軟便:形はあるものの通常より柔らかい便。
・水様便:液状の便。
・血便:血液が混じった便。
<発症期間>
・急性下痢:突然始まり、通常数日以内に治まります。
・慢性下痢:2〜3週間以上続く下痢を指します。
犬の場合、粘液便や血便が見られることが多く、一方で猫は水様便や便秘との繰り返しが特徴です。便の観察は重要な情報となるため、状態を記録しておきましょう。
犬の下痢が続く主な原因について
犬の下痢が続く原因として、以下のようなものがあります。
<食事性の下痢>
急な食事の変更や、犬にとって有害な食材を摂取したことによって起こる下痢です。例えば、人間の食べ物や脂肪分の多い食品を与えると、消化不良を引き起こすことがあります。
<感染症>
ウイルス性疾患(パルボウイルスやコロナウイルスなど)や、寄生虫感染(ジアルジアなど)が原因で発生します。これらは特に子犬や免疫機能が低下している犬でリスクが高まります。
<炎症性腸疾患>
腸管に慢性的な炎症が生じる病気で、中高齢犬やジャーマン・シェパードなどの大型犬種に多く見られる傾向があります。原因は多岐にわたり、アレルギーや遺伝的要因が関与することもあります。
<腫瘍>
腸管に腫瘍ができると、下痢の原因となることがあります。特に高齢犬で発症リスクが高く、早期診断と治療が重要です。
猫の下痢が続く主な原因について
猫の下痢の原因は、以下のようなものがあります。
<腸内細菌叢の乱れ>
腸内細菌のバランスが崩れることで下痢が発生することがあります。特に抗生物質の使用後や、急な食事の変更時に多く見られます。
<ストレス>
猫は非常に繊細な動物であり、環境の変化や大きな音、新しい家族(人や動物)の加入などがストレスの原因になることがあります。これが消化器系に影響を及ぼし、下痢につながる場合があります。
<感染症>
外飼いの猫では寄生虫感染のリスクが高くなります。特に免疫が未発達な子猫では、感染症による下痢が多く見られます。感染症は早期に発見し治療することが重要です。
<全身性疾患>
甲状腺機能亢進症や腎臓病といった全身性の病気が下痢の原因となることがあります。これらの疾患は主に高齢猫に多く見られ、慢性的な症状が現れることが特徴です。慢性的な下痢は栄養不足や体力の低下を引き起こすため注意が必要です。
すぐに受診が必要な症状
下痢の症状に加えて、以下の症状が見られた場合は、速やかに動物病院を受診するようにしましょう。
・脱水:皮膚をつまむと戻りが遅い。水を飲む量が減る。
・嘔吐や食欲不振:頻繁に吐いたり、食事を拒否する様子が見られる。
・元気消失:動きたがらず、ぐったりしている。
脱水、食欲低下、嘔吐が同時に見られる場合、体力の急激な低下を招き、特に子犬・子猫では命に関わる危険があります。また、慢性化した下痢は栄養不良や体重減少を引き起こし、免疫や体力の低下にもつながるので、注意が必要です。
ご家庭でできるケアと予防法
ご家庭でのケアとして、以下の方法があります。
<食事管理>
栄養バランスの整ったフードを適切な量で与えることを心がけましょう。フードを切り替える場合は、突然変更せず、数日かけて少しずつ移行することが大切です。下痢がすでに見られる場合は、消化に優しい特別なフードを選び、症状が改善してから徐々に通常食に戻すようにしましょう。
<清潔な生活環境>
飲み水は常に新鮮なものを用意し、食器や寝床の清掃は定期的に行ってください。特に食器は細菌が繁殖しやすいため、衛生的に保つことが重要です。また、床やカーペットなどの清掃も忘れず行い、清潔な環境を維持しましょう。
<ストレス軽減>
犬や猫がリラックスできる環境を整えることも、健康維持に役立ちます。猫には高い場所や爪とぎスペースを用意し、安心して過ごせる場所を提供してください。犬には、適度な散歩や遊びを取り入れ、エネルギーを発散させることが効果的です。また、新しい環境や変化に対しては、十分な慣れの時間を与えることで、ストレスを軽減できます。
<予防的駆虫>
特に屋外で過ごす時間が多い犬や猫には、定期的な駆虫薬の投与を獣医師に相談しながら検討してください。また、寄生虫感染のリスクを下げるため、庭や遊び場の衛生管理を徹底することも大切です。砂場や草むらには特に注意しましょう。
さらに、年に1〜2回の健康診断を受けることで、目に見えない健康問題を早期に発見し、予防や適切な治療につなげることが可能です。日々のケアと定期的な健康チェックを組み合わせて、愛犬・愛猫の健やかな生活をサポートしましょう。
まとめ
犬や猫の下痢は、単なる一時的な不調から深刻な病気のサインである場合まで、その原因は多岐にわたります。一時的なものとして自然に治る場合もありますが、症状が長引いたり重篤な症状を伴う場合は、早急な対応が必要です。日頃から便の状態や生活習慣を丁寧に観察し、異常を感じたら早めに動物病院にご相談ください。
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