犬・猫のマラセチア皮膚炎|かゆみ・におい・フケが続くときの正しい治療法
- 2025年9月8日
- 病気について
「最近うちの子、かゆがってばかりいる」「体からにおいがする気がする」ーーそんなお悩みを抱えながら「シャンプーで様子を見ているけど、なかなか良くならない」と感じている飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
もしかするとそれは、マラセチア皮膚炎と呼ばれる皮膚トラブルかもしれません。マラセチアは皮膚に常在するカビ(真菌)の一種ですが、何らかのきっかけで過剰に増えると、強いかゆみやにおい、赤み、フケなどの症状を引き起こします。
今回は、マラセチア皮膚炎の正しい理解と治療法、そして再発を防ぐためのポイントについて解説します。
■目次
1.マラセチア皮膚炎とは?再発しやすい犬・猫の皮膚トラブル
2.見逃せない症状と自己判断の落とし穴
3.動物病院での診断と治療の流れ|根本改善のカギ
4.再発防止と日常のケア|予防のカギは皮膚環境の管理
5.まとめ
マラセチア皮膚炎とは?再発しやすい犬・猫の皮膚トラブル
マラセチアは、犬や猫の皮膚にふだんから存在している常在菌です。健康な状態であれば問題を起こすことはありませんが、皮膚のバリア機能が低下していたり、湿度や皮脂の分泌が多くなっていたりすると、マラセチアが異常に増殖してしまいます。
このように菌が過剰に増えた状態が「マラセチア皮膚炎」です。
皮膚の表面に炎症を引き起こし、かゆみ・赤み・ベタつき・におい・フケ・脱毛などの症状が現れます。
発症しやすいのは、以下のような湿気がこもりやすく皮脂の多い部位です。
・耳の中(耳マラセチア)
・わきの下
・足の指の間
・お腹まわり
・顎まわりや首まわり
一度発症すると繰り返しやすく、慢性化する前に早期対応することが大切です。
見逃せない症状と自己判断の落とし穴
マラセチア皮膚炎では、以下のような特徴的な症状が見られます。
・しつこいかゆみ(とくに耳や足先を執拗にかく、こすりつけるなど)
・皮膚の赤みやベタつき
・独特のにおい(甘酸っぱいような、脂っぽいにおい)
・黄色がかったフケや脱毛
・耳の茶色い汚れ(外耳炎を伴う場合)
こうした症状があると「皮膚が汚れているのかな」と思って、市販のシャンプーや外用薬で様子を見る飼い主様も少なくありません。
しかし、マラセチア皮膚炎は市販薬での対処では根本的に改善しにくい皮膚病です。一時的に良くなったように見えても、菌のコントロールができていなければすぐ再発してしまうケースが多くあります。
また、洗浄を繰り返すことで皮膚のバリア機能がさらに低下し、炎症が悪化してしまうこともあるため注意が必要です。
特に「何度も同じ部位が赤くなる」「においが強くなる」といった状態が続く場合は、早めに動物病院での診断を受けることが大切です。
動物病院での診断と治療の流れ|根本改善のカギ
マラセチア皮膚炎を改善するには、原因をしっかり突き止めたうえで、適切な治療を継続することが重要です。
<診断方法の一例>
診察では、まず皮膚の状態を視診・触診し、次のような検査を必要に応じて行います。
・皮膚掻爬・テープ検査:皮膚表面の細胞や菌を採取し、マラセチアの数を顕微鏡で確認
・細菌培養検査:重度や再発を繰り返す場合に、細菌や真菌の種類・薬剤感受性を評価
・血液検査:アレルギーや内分泌疾患など、ほかの要因が関与していないかをチェック
<治療の基本>
マラセチア皮膚炎の治療では、症状の程度や体質に応じて、以下のような方法を組み合わせて進めていきます。
・抗真菌薬の外用・内服:症状や重症度に応じて選択
・薬用シャンプーによる洗浄:はじめは週2〜3回、その後は様子を見ながら間隔を調整
・保湿ケアや消炎剤:かゆみ・赤みが強い場合には補助的に使用
治療の目的は、マラセチア菌を「完全に除去すること」ではなく、過剰な増殖を抑えて症状をコントロールすることにあります。
マラセチアは健康な皮膚にも存在する常在菌であるため、治療後も体質や環境によっては再発することがあります。そのため、数週間の治療に加え、再診や継続的なケアが必要となる場合があることをご理解いただくことが大切です。
再発防止と日常のケア|予防のカギは皮膚環境の管理
治療が一段落して症状が落ち着いた後も、皮膚の状態を良好に保ち、再発を防ぐためのケアがとても大切です。マラセチア皮膚炎は再発しやすい疾患のひとつですが、日頃のちょっとした工夫が皮膚環境を整えることにつながります。
<清潔と保湿で皮膚を守る>
定期的なシャンプーや耳掃除を行うことで、過剰な皮脂や汚れを取り除き、皮膚を健康な状態に保つことができます。ただし、頻度や使うシャンプーの種類は皮膚の状態によって異なるため、獣医師の指導のもとで無理なく続けることが重要です。
<生活環境を見直す>
寝床やカーペットなど、犬や猫が長時間接する場所の通気性や清潔さを保つことも効果的です。湿気がこもりにくい素材のベッドを選んだり、こまめに洗濯や掃除をすることで、皮膚トラブルの予防につながります。
<食事と体調管理も大切なポイント>
バランスのとれた食事や適度な運動を通じた体調管理も、皮膚のバリア機能を高めるうえで欠かせません。肥満や栄養の偏りがあると、皮脂の分泌が乱れやすくなるため、毎日の食生活を見直すことも再発予防の一環といえます。
<少しの変化でも気づいたときに相談を>
そして、なにより大切なのは「なんとなく調子が悪そう」と感じたときに早めにご相談いただくことです。症状が悪化する前に対応できれば、それだけ治療期間も短く、負担も軽減できます。
まとめ
マラセチア皮膚炎は、かゆみ・におい・フケ・赤みなどの症状が続くつらい皮膚トラブルですが、正しく診断し、その子に合った治療とケアを行えば、うまくコントロールして快適な状態を保つことができます。
市販薬や自己判断では根本的な改善が難しく、再発を繰り返してしまうケースも少なくありません。「最近においが気になる」「何度も同じ場所をかいている」など、心当たりがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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