犬・猫のSFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは?症状・予防・受診のポイントを解説
- 2025年9月8日
- 病気について
「最近SFTSって聞くけど、うちの犬や猫にも関係あるの?」「人にうつるって本当?」
そんな不安や疑問を抱える飼い主様もいらっしゃるかもしれません。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)はマダニを介して感染する病気で、近年は犬や猫でも発症例が報告されています。正しい知識がないまま、ネットの情報だけで怖くなってしまう方も少なくないのではないでしょうか。
今回は、SFTSの基礎知識から、犬・猫と人の感染リスク、その症状や受診の目安、家庭でできる予防法をご紹介します。
■目次
1.SFTSとは?犬・猫・人に関わる感染症
2.犬・猫で見られるSFTSの症状と受診の目安
3.SFTSの予防と日常でできるマダニ対策
4.まとめ
SFTSとは?犬・猫・人に関わる感染症
SFTS(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:重症熱性血小板減少症候群)は、SFTSウイルスを保有するマダニによって感染するウイルス性疾患です。2011年に日本でも初めて確認されて以降、西日本を中心に散発的な感染例が報告されています。
人が発症すると、発熱・嘔吐・下痢・意識障害などの症状が現れ、致死率は約10〜30%と高いことも報告されています。
<犬や猫にも感染するの?>
2023年時点でのデータによると、猫では560件、犬では36件の発症例が報告されており、特に猫は人よりも発症例が多く、致死率も約65%と高い傾向があります。
多くの犬や猫では無症状〜軽度の症状で経過する場合もありますが、重症化するケースや、感染した犬・猫の体液や血液を介して人に感染した事例も報告されています。
過度に恐れる必要はありませんが「うちの子は大丈夫」と油断せず、正しい予防と早期対応が大切です。
犬・猫で見られるSFTSの症状と受診の目安
犬や猫がSFTSを発症した場合、以下のような症状が見られることがあります。
・発熱(熱っぽい、体が熱い)
・元気がなくなる、動かない
・食欲不振
・嘔吐や下痢などの消化器症状
・歯茎などの出血傾向
・黄疸(白目や皮膚が黄色く見える)
・意識の変化(ぼーっとしている、反応が鈍い)
初期は体調不良があいまいで「少し元気がないかな」程度のサインから始まることもあります。しかし、SFTSは進行が早く、重症化することもあるため、早めの対応が重要です。
以下のような状況がある場合は、できるだけ早く動物病院にご相談ください。
・上記のような症状がある
・マダニに咬まれた痕がある(小さな黒い点、赤く腫れているなど)
・草むらや山林に入った直後に体調を崩した
・自宅でマダニを見つけた
また、無理にマダニを取ろうとするのは避けてください。一部が皮膚に残ることで感染リスクが高まり、かえって危険です。マダニは無理に取らずに、動物病院で専用の器具を使って安全に取り除いてもらいましょう。
SFTSの予防と日常でできるマダニ対策
SFTSは、SFTSウイルスを保有したマダニに咬まれることで感染するウイルス性疾患です。したがって、最も有効な予防策は、犬や猫、そして人がマダニに咬まれないようにすることです。日常生活で実践できる対策を、犬・猫と飼い主様それぞれの視点からご紹介します。
<愛犬・愛猫のための対策>
マダニは主に草むらや山林に生息していますが、住宅地の庭先や公園でも見つかることがあります。以下のような対策を習慣にすることで、犬や猫がマダニに咬まれるリスクを大きく減らすことができます。
・定期的なマダニ予防薬の使用
動物病院で処方されるスポットタイプ(首筋に垂らすタイプ)や内服タイプのマダニ予防薬は、確実な予防効果があり、安全性も高いものです。通年での使用が理想ですが、特に活動が活発になる春〜秋は欠かせません。
・散歩や外出後の全身チェック
散歩から帰ってきたら、耳の裏、首のまわり、足の指の間、しっぽのつけ根などを中心に、マダニが付着していないかやさしく確認しましょう。見つけても、無理に取らず病院に相談するようにしてください。
・草むら・藪への立ち入りを控える
公園や川沿いの道などで草が生い茂っている場所では、マダニが葉の先に待ち構えていることもあります。可能であればそうした場所は避けるか、短時間にとどめましょう。
・室内飼育でも油断しない
「うちは完全室内飼いだから大丈夫」と思っていても、飼い主様の衣類や靴、来客のペットなどを介してマダニが入り込むこともあります。すべての犬・猫に予防薬の使用をおすすめしています。
<飼い主様自身のマダニ対策>
SFTSは人にも感染するため、飼い主様自身の身を守ることも、家族全体の安全につながります。
・肌の露出を減らす服装を心がける
野外に出かける際は、長袖・長ズボン・帽子・足首まで隠れる靴下などを着用し、できるだけ肌を露出しない服装を心がけましょう。
・虫よけスプレーを使用する
マダニに効果のある成分(イカリジンやディートなど)が含まれた虫よけスプレーを、服や帽子・靴などに使用することも効果的です。
・帰宅後のチェックとシャワー
外出後はできるだけ早く衣類を着替え、シャワーで体を洗い流すことで、マダニを室内に持ち込むリスクを減らせます。特に草むらや森林などへ行った後は意識的に行いましょう。
このように、犬・猫と人の双方がそれぞれできる予防対策を習慣にすることが、SFTSを含むマダニ媒介感染症の予防には欠かせません。
まとめ
SFTSは確かに注意が必要な感染症ですが、過剰に恐れる必要はありません。大切なのは「正しく知って、きちんと予防すること」。そして、犬や猫の体調に異変を感じたときに迷わず相談できる場所があることです。
八幡みなみ動物病院では、地域の飼い主様とそのご家族(犬や猫)が安心して暮らせるように、マダニ予防のご相談や、SFTSを含む感染症への対応も丁寧に行っています。
「うちの子、最近草むらによく入ってたな…」
「気になる症状があるけど、受診するほどではないかも…」
そう思ったときこそ、お気軽にご相談ください。
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