何を食べた…?犬にとって危険な食べ物と食中毒の症状・対処法を解説
- 2025年7月14日
- 病気について
愛犬が目を離したすきに何かを食べてしまった…という経験がある飼い主様も少なくないのではないでしょうか。
実は、犬にとって危険な食べ物は私たちの身の回りに数多く存在します。人間にとっては無害でも、犬にとっては命に関わるものも少なくありません。わずかな量でも体に異常をきたし、早急な対応が必要となるケースもあります。
今回は、犬の食中毒について、原因となる食材、症状、応急処置、日常生活での注意点までを、獣医師の視点から詳しく解説します。
■目次
1.犬の食中毒とは?
2.食中毒の症状と緊急性
3.食中毒の診断と治療
4.日常生活での予防と注意点
5.まとめ
犬の食中毒とは?
犬の食中毒とは、有害な食品や細菌、ウイルスなどを摂取したことで体に異常が起こる状態を指します。
私たち人間が問題なく食べられるものでも、犬にとっては有毒となることがあり、ほんの一口が命に関わることもあるため注意が必要です。
<犬にとって危険な食べ物の例>
以下は、犬にとって特に危険性が高いとされている食材です。
・チョコレート
テオブロミンによる中毒を引き起こし、心臓や神経系に影響を与えることがあります。
・タマネギ・ニンニク
赤血球を壊す作用があり、貧血や嘔吐の原因になります。加熱しても毒性は残ります。
・ブドウ・レーズン
原因はまだ明確ではありませんが、少量でも腎不全を引き起こすおそれがあります。
・キシリトール
急激な血糖値の低下や肝不全を引き起こし、命に関わることもあります。
・アルコール、カフェイン、生のパン生地、カビの生えた食品
神経症状や消化器の障害を招く危険があります。
・生肉や傷んだ食品
サルモネラ菌や大腸菌などの細菌が含まれている可能性があり、下痢や嘔吐といった食中毒症状を引き起こすことがあります。
食中毒の症状と緊急性
食中毒は、摂取から数時間以内に症状が出ることが多く、急激に悪化する場合もあります。代表的な症状には以下のようなものがあります。このような症状がみられたらできるだけ早く動物病院に相談しましょう。
・嘔吐・下痢
・元気消失、ぐったりする
・ふらつき、震え、けいれん
・よだれが多い、呼吸が早い
・意識がもうろうとする
特に、チョコレートやキシリトールの摂取後には命に関わる急変が起こることもあるため、少しでも異変を感じたらすぐに動物病院に連絡し、受診することをおすすめします。
<応急処置は必ず獣医師の指示を仰ぎましょう>
危険なものを口にしたとき「とりあえず吐かせれば大丈夫かな」と思ってしまうことがあるかもしれません。しかし、自己判断での催吐(吐かせる処置)は、かえって症状を悪化させてしまうこともあるため、とても危険です。
毒物の種類や摂取してからの時間によっては、吐かせることが適さないケースも多くあります。不安なときほど慌てず、まずは動物病院に連絡し、獣医師の指示に従って行動することが大切です。
また、動物病院での判断をスムーズにするために、次のような情報をできるだけ詳しく伝えるようにましょう。
・いつ食べたか
・何を食べたか(包装などがあれば持参)
・どれくらいの量か
これらの情報があることで、治療方針を早く、そして正確に決めることができ、愛犬への負担を最小限に抑えることが期待できます。
食中毒の診断と治療
動物病院ではまず、飼い主様から伺った内容をもとに検査や治療を進めます。
・血液検査:臓器への影響の有無を確認
・レントゲン・超音波検査:異物の確認
・胃洗浄・吸着剤の投与:体内に残る毒素の除去
・点滴治療:脱水や内臓ダメージの回復サポート
摂取後の対応が早いほど、回復の可能性は高まります。
<重症化した場合のケアについて>
腎不全や肝障害など重い症状を起こす食材(例:ブドウやレーズン)を摂取した場合は、数日間の入院や継続的な治療が必要になることもあります。
ただし、早めにご相談いただければ、より負担の少ないケアで回復が見込めるケースも少なくありません。大切なのは「もしかして…」と気づいたその時点で、迷わず動物病院にご相談いただくことです。
日常生活での予防と注意点
食中毒は、気をつけていてもふとした瞬間に起こってしまうことがあります。ここでは、家庭での予防策や注意しておきたいポイントをご紹介します。
<拾い食い・ゴミあさりの対策>
日常生活で意外と多いのが「知らないうちに食べていた」というケース。おうちの中ではゴミ箱をあさっていたり、外の散歩中に落ちていたものを口にしてしまったり……といった場面は、どんな犬にも起こり得ます。
そんな事故を防ぐために、次のような対策が効果的です。
・蓋つきのゴミ箱を使う、生ゴミは手の届かない場所に置く
・お散歩ではリードを短めに持ち、口元の動きに注意を払う
・「ちょうだい」「出して」などの指示を覚えさせ、口にしたものを安全に出させる練習をする
こうしたしつけは時間がかかるかもしれませんが、最終的には愛犬の命を守る大きな力になります。できることから、少しずつ始めていきましょう。
<生肉・生魚は与えないのが安心です>
最近では「より自然な食事を」として生肉や生魚を手作りで与える飼い主様も増えています。たしかに魅力的に感じる面もありますが、犬にとってはサルモネラ菌や寄生虫などのリスクが伴うため、基本的には避けることをおすすめします。
特に、子犬や高齢の犬、持病がある子、免疫力が落ちている状態の子、または手術後などで体力が低下している場合は、ほんの少しの摂取でも体調を崩してしまうおそれがあります。
こうした子に限らず、できるだけ加熱調理した安全な食材を選ぶことが安心です。もしどうしても加工されていない食材を取り入れたいとお考えの場合は、必ず事前に獣医師に相談し、その子の体質や健康状態に合った方法を選ぶようにしましょう。
まとめ
犬の食中毒は、私たちの生活にごく身近な食材で簡単に起こります。ほんの一口でも、犬にとっては大きなリスクとなり、症状が出てからでは手遅れになるケースも少なくありません。「人間にとっては普通のものでも、犬には危険かもしれない」そんな視点を持って日常を見直すことが、愛犬の健康を守る第一歩です。
少しでも「おかしいな」と感じたら、自己判断せず、すぐに動物病院にご相談ください。毎日のちょっとした予防と、いざというときの冷静な対応が、愛犬の命を救う大きな力になります。
■関連する記事はこちら
・愛犬が誤飲したらどうする?|危険な物と対処法を獣医師が詳しく解説
・犬と猫の誤飲誤食について|飲み込みやすいものや対処法
千葉県市川市大和田の動物病院なら「八幡みなみ動物病院」
医院案内はこちらから
診療案内はこちらから