愛犬を熱中症から守る!|熱中症の症状と緊急時の対策方法
- 2024年9月26日
- 病気について
熱中症は人間だけのものと思われがちですが、実は犬も熱中症になることがあります。
犬は肉球でしか汗をかけず、「ハッハッ」と舌を出して呼吸することでしか体温を調整できないため、人間以上に注意が必要です。
今回は、犬がどんな状況で熱中症にかかりやすいのか、その症状や緊急時の対処法について解説します。
■目次
1.犬の熱中症とは
2.熱中症のリスク要因
3.熱中症の初期症状と進行段階
4.緊急時の対処法
5.獣医師に相談すべき症状と状況
6.予防法
7.まとめ
犬の熱中症とは
犬は人間よりも暑さに弱い動物です。熱中症にかかりやすいのは、全身が毛で覆われていることに加え、汗をかける場所が肉球の表面だけという特徴が関係しています。
犬は汗をかけない分、パンティング(舌を出して速く呼吸すること)で体の熱を逃がしていますが、暑い環境ではこの仕組みが追い付かず、体内に熱がこもってしまい、熱中症を引き起こすことがあります。
熱中症のリスク要因
犬では、次のような状況や条件で熱中症になりやすいことが知られています。
・高温多湿な環境
夏の暑い日中など、高温多湿な屋外は犬にとって非常に過酷な環境です。お散歩はできるだけ早朝や夕方の涼しい時間帯に行い、木陰でこまめに休憩を取るながら歩くようにしましょう。
・運動後
激しい運動をすると体温が上がり、安静にしているときよりも熱中症のリスクが高まります。特に暑い日は運動量に気をつけましょう。
・密閉された車内
車内は閉め切っていると外気温よりもさらに暑くなり、まるでサウナのような状態になることがあります。車内に犬を残すのは大変危険です。
・短頭種
フレンチ・ブルドッグ、シーズー、ボストン・テリア、パグなどの短頭種は、呼吸器に異常があり、体温調節が上手にできません。そのため、他の犬種よりも熱中症にかかりやすい傾向があります。
・肥満
脂肪が多いと体内に熱がこもりやすくなります。肥満は運動不足や食事管理の不備が原因となることが多いため、日頃からしっかり管理することが大切です。
熱中症の初期症状と進行段階
熱中症は、進行段階によってさまざまな症状が現れます。
<初期症状>
・呼吸が速くなる:パンティング(速い呼吸)をすることで、体温を下げようとしています。
・よだれが出る:熱中症になるとよだれが増え、ゼエゼエと息を荒らげることがあります。
・粘膜が充血する:軽度の脱水が進行しており、口の中や目の粘膜が赤く充血します。
<重篤な症状>
・ふらつく:脱水が進み、体に十分な酸素が行き渡らなくなっている状態です。
・粘膜が青白くなる:全身に酸素が行き渡らなくなっており、非常に危険なサインです。
・意識がない:命の危険が迫っている状態です。すぐに緊急対応が必要です。
ご家庭で熱中症かどうかをチェックする際には、以下のポイントに注目しましょう。
・粘膜の色:赤く充血している、または青白くなっている場合は危険です。
・体温:体温が40℃以上であれば、熱中症の危険があります。
・消化器症状の有無:呼吸の異常だけでなく、嘔吐や下痢が見られることもあります。
・意識の有無:意識がなくぐったりしている場合は、緊急対応が必要です。
緊急時の対処法
熱中症の疑いがあるときには、以下のような緊急対応が必要です。
・涼しい場所への移動
屋外にいる場合は、風通しの良い日陰に移動し、直射日光を避けることで体温の上昇を防ぎましょう。もしご自宅が近ければ、冷房の効いた部屋に戻り、安静にさせるのも有効です。
・体全体の冷却
体温を下げるために、氷嚢や保冷剤を使って首や脇の下、股の間など太い血管が通っている部分を冷やすと効果的です。
また、冷たい水で濡らしたタオルを使い、愛犬の体全体を軽く包むことで体温を下げることができます。
・水分補給
水が飲めるようであれば、経口補水液や水を与えて、脱水を防ぎましょう。
ただし、これらの対処はあくまで応急処置に過ぎません。
熱中症が疑われる場合は、すぐに獣医師の診察を受けるようにしましょう。動物病院へ向かう道中でも、体を冷やす工夫を続け、症状の悪化を防ぐことが大切です。
獣医師に相談すべき症状と状況
熱中症は非常に緊急性の高い病気です。以下のような異常が見られた場合は、すぐに獣医師に相談し、診察を受けましょう。
・意識不明
飼い主様の呼びかけに反応せず、立てなくなっている場合は、重度の熱中症の可能性が高いです。この状態が続くと意識が戻らないまま、命を落とす危険もあります。
・けいれん
体温が40℃以上に達し、手足の硬直や、横になったまま体をバタバタさせるような動きが見られる場合、脳に異常が発生している可能性があります。
・高体温の持続
体温が40℃以上の状態が続くと、症状が悪化しやすくなります。高体温が長引くと内臓の機能が低下し、元に戻らなくなる危険性があります。
予防法
熱中症は命に関わる病気ですが、日頃から熱中症対策をすることで予防ができます。
特に夏場は、日中の気温が35℃を超えることもあるため、暑い時間帯の外出は避け、冷房の効いた室内で過ごさせるようにしましょう。
お散歩は、できるだけ早朝や夕方の涼しい時間帯に連れて行くことがおすすめです。
また、こまめな水分補給も大切です。脱水を防ぐために、いつでも新鮮な水を用意しておきましょう。もし愛犬が水をあまり飲まない場合は、水飲み容器を変えたり、水分を多く含むフードに切り替えたりして工夫してみてください。さらに、散歩中は日陰で休憩を取りながら、水分補給をこまめに行うことが重要です。
そして、車内に愛犬を残すことは絶対に避けましょう。車内は閉め切ると短時間で非常に高温になり、数分で危険な状態に達してしまいます。たとえ短時間のお買い物でも、犬を車内に置き去りにするのは非常に危険です。
まとめ
犬は体温調節が得意ではないため、特に熱中症になりやすい動物です。初夏から秋にかけて気温が高くなる時期には、お散歩やお出かけの際に十分な注意が必要です。
重度の熱中症は命に関わる危険があるため、少しでも疑わしい症状が見られたらすぐに動物病院を受診しましょう。
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<参考文献>
Risk Factors for Severe and Fatal Heat-Related Illness in UK Dogs—A VetCompass Study – PMC (nih.gov)