犬の椎間板ヘルニアについて|愛犬の背中の痛み、椎間板ヘルニアかも?
- 2024年6月11日
- 病気について
椎間板ヘルニアは非常に痛みを伴う病気であり、脊髄を圧迫して様々な神経症状を引き起こします。
特にダックスフンド、フレンチブルドッグ、コーギーなど特定の犬種は、遺伝的にこの病気にかかりやすい傾向があるため注意が必要です。
今回は、犬の椎間板ヘルニアの「原因、症状、診断方法、そして治療法」について詳しく解説します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
原因
椎間板は脊椎を構成する椎骨の間に位置し、中心にゲル状の髄核と、その周囲を取り囲む頑丈な線維輪から成り立っており、クッションの役割を果たしています。
この椎間板の変性が進むことで髄核が突出し、脊髄や神経根を圧迫することで神経症状や痛みを引き起こします。
椎間板ヘルニアはその発症メカニズムにより、大きくハンセンⅠ型とハンセンⅡ型に分類されます。
<ハンセンⅠ型椎間板ヘルニア>
このタイプは「軟骨異栄養性犬種」と呼ばれる特定の犬種に多く見られます。代表的な犬種にはダックスフンド、フレンチブルドッグ、コーギー、ビーグルなどが挙げられます。
ハンセンⅠ型は、これらの犬種が若い頃から椎間板の変性を始め、突然髄核が線維輪を突き破り、脊髄を圧迫してしまう症例が多くあります。
ハンセンⅠ型は急に発症することが特徴で、予兆なく突然の麻痺や激しい痛みを伴います。
<ハンセンⅡ型椎間板ヘルニア>
ハンセンⅡ型は、主に中年から老年の犬に見られる病態で、加齢により椎間板の外側の線維輪が徐々に肥厚し、これが脊髄を圧迫する形で進行します。ハンセンⅡ型はハンセンⅠ型に比べると発症は緩やかで、長期間にわたる圧迫が神経症状を引き起こします。
特に問題となるのはハンセンⅠ型の椎間板ヘルニアで、早期発見と迅速な治療が犬の苦痛を最小限に抑え、回復を促す鍵となります。
症状
椎間板ヘルニアは犬にとって非常に痛みを伴う病気ですが、初期の症状は軽度であることが多く、飼い主様が気付かないこともあります。
<初期の兆候>
・背中に触ると、痛みでキャンと鳴くことがあります。
・以前は元気に飛び乗っていたソファやベッドへ興味を示さなくなります。
・階段の昇り降りを嫌がります。特に降りる動作が困難です。
・歩く際に足を引きずるようになります。
・足や腰付近を異常に気にする行動が見られます。
・座ったり立ったりする動作が不自由になり、腰がうまく支えられなくなります。
<症状が進行すると>
・足の麻痺が進み、立ち上がれなくなります。
・排尿や排便のコントロールが効かなくなります。これは神経の損傷が深刻化している証拠です。
これらの症状が見られた場合は、椎間板ヘルニアの可能性が高いと考えられます。
椎間板ヘルニアは初期段階での対応が重要ですので、症状の最初の兆候を見逃さず、早めに動物病院へ連れていき、適切な診断と治療を受けましょう。
診断方法
診察ではまず、いつから痛がるようになったか、日常生活での様子(活動性の変化、食欲の有無)について詳しく聞き取ります。
次に触診を通じて痛がる部位を確認し、どの神経が影響を受けているかを推測します。また、歩き方を観察し、足を引きずる動作や階段の昇り降りの困難さから、麻痺の程度を評価します。
神経学的検査では反射の有無や痛覚反応を確認し、病変が脳にあるのか、または椎間板ヘルニアなどの脊髄の問題によるものかを見極めます。さらに、レントゲン検査を用いて骨折や他の骨の異常がないかも調べます。
脊髄の問題が疑われる場合は、椎間板ヘルニアのほかに脊髄腫瘍や脊髄梗塞など、他の疾患も考慮に入れます。確定診断のためには、全身麻酔下でMRI検査を行うことが多く、これにより椎間板が脊髄を圧迫しているかどうかを詳細に確認します。
治療方法
椎間板ヘルニアの治療は、大きく分けて内科治療と外科治療があり、その症状の重さや犬の年齢などに応じて最も適切な治療法を選択します。
痛みや麻痺が軽度の場合、基本的には内科治療を行います。自宅での絶対安静を保ちつつ、炎症と痛みを抑えるために非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイドを使用します。
一方、痛みや麻痺が重度の場合は内科的治療だけでは改善が見込めないことが多く、外科治療が必要になることがあります。
このような状況では、片側椎弓切除術や小範囲片側椎弓切除術といった手術が実施され、飛び出した椎間板を取り除くことで神経への圧迫を解消します。
そして手術後はリハビリテーションを行い、麻痺からの回復を促すことが重要です。
予防法やご家庭での注意点
椎間板ヘルニアは完全に予防することは難しいですが、リスクを減らすためにはいくつかの予防策が効果的です。特に体重管理と適切な運動が重要とされています。
肥満は椎間板に過度な圧力を加え、ヘルニアのリスクを高める一因となるため、愛犬の体重を健康的な範囲内に保つようにしましょう。
適度な運動は体重管理だけでなく、筋肉を強化し、関節や椎間板への過度な圧力を防ぎます。
しかし、激しい運動は関節に大きな負担がかかるため、跳びはねるような運動や高速で走り回る運動は避けましょう。
定期的な健康診断も予防において非常に有効です。定期的に獣医師による診断を受けることで、潜在的な健康問題を早期に発見し、早めの治療が可能となります。
まとめ
犬の椎間板ヘルニアは適切な治療とケアにより、症状を最小限に抑えることが出来ます。飼い主様は愛犬の行動や健康状態を常に観察し、異常を感じたら早めに獣医師の診断を受けることが大切です。
日頃からの体重管理と適切な運動が、椎間板ヘルニアのリスクを減らすためには欠かせません。愛犬が健康で快適に過ごせるよう、適切なケアを心掛けましょう。
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