犬の腎臓腫瘍について|初期段階では症状が現れにくい
- 2024年6月11日
- 病気について
腎臓腫瘍には、腎細胞がん、腎芽腫、リンパ腫などさまざまな種類があり、これらは悪性の性質を持っています。
片方の腎臓のみの腫瘍であれば、手術で腫瘍のある方の腎臓を摘出することが治療の第一選択となります。
腫瘍が進行し大きな血管まで影響を及ぼすと、手術の難易度が高まります。そのため、早期発見が非常に重要とされています。しかし、腎臓腫瘍は初期段階では特有の症状が現れにくいため、定期的な健康検査が重要です。
今回は犬の腎臓腫瘍について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。
■目次
1.腎臓腫瘍とは?
2.原因
3.症状
4.診断方法
5.治療方法
6.予防法やご家庭での注意点
7.まとめ
腎臓腫瘍とは?
腎臓の組織から発生する腫瘍で、そのほとんどが悪性であるとされています。
犬においては、腎腺癌が最も一般的な腎臓腫瘍であり、肉腫、リンパ腫、腎芽腫なども見られます。これらの腫瘍は主に中高齢の犬に発生することが多いですが、腎芽腫は若年から高齢にかけて幅広い年齢層で発生する可能性があります。
腎臓腫瘍と診断される時点で、約10〜20%のケースで転移していると考えられています。転移は主にお腹の中のリンパ節や肺へと発生し、場合によっては骨などの他の組織にも転移することがあります。
さらに、頻度は多くありませんが、腎臓腫瘍によっては赤血球増加症(血液中の赤血球数が正常よりも多い状態)を引き起こすこともあります。
原因
腎臓腫瘍の発生については、特定の原因はありませんが、遺伝的要因、環境因子、年齢などが影響していると考えられています。
腎細胞がんは、他の腫瘍と同様に、高齢で発症する傾向があります。これは、細胞の老化や長期間の環境因子への曝露が、がんの発生に寄与すると考えられています。
一方で、腎芽腫は先天性の腫瘍であり、若年層でも見られます。これは、胎生期における腎臓の細胞が正常に成熟しないことによって発生すると考えられており、非常に大きく成長することがあります。
また、リンパ腫が腎臓にできることがあります。リンパ腫は、リンパ系の細胞が悪性化することによって発生し、体のさまざまな部位に影響を及ぼします。
症状
腎臓腫瘍の初期段階では症状がほとんど現れないか、あっても非常に軽微なため、気づかれにくいのが一般的です。そのため、多くの場合、病気が進行してしまうまで見過ごされがちです。
進行した腎臓腫瘍になると、血尿が出る、尿量の増加、お腹の膨張感、元気のなさなど、より顕著な症状が現れることがあります。
しかし、こうした症状が出ないこともあり、定期的な健康検査や身体検査の際に、獣医師が大きくなった腎臓に偶然触れることで、腫瘍の存在が発見されるケースが多いのです。
診断方法
腎臓腫瘍の診断には、レントゲン検査、超音波検査、尿検査などが初期段階で行われます。
これらの検査で腫瘍の疑いがある場合、CT検査を含むさらに詳細な検査を行います。これにより、腫瘍の位置、大きさ、および拡散の程度をより正確に把握することが可能になります。
腫瘍が十分に大きくなった場合には、触診によってもその存在を確認できる場合があります。
腎臓は赤血球を作るためのホルモンを分泌する臓器です。腎臓腫瘍の場合、このホルモンが過剰に分泌されることがあり、血液検査では赤血球の数が通常よりも多いことが確認されることがあります。この現象は赤血球増加症と呼ばれ、腎臓腫瘍の可能性を示唆する指標となり得ます。
また、腎臓に細い針を刺して細胞を採取する、針生検という検査を行うこともあります。
治療方法
治療方法は、腫瘍の種類、大きさ、進行度、さらには犬の全体的な健康状態に基づいて決定されます。
治療の主な選択肢として考えられるのは外科手術で、特に片方の腎臓にのみ腫瘍が存在し、その腫瘍がリンパ節や肺へ転移していない場合、腫瘍が存在する腎臓の摘出(腎臓摘出術)が行われます。
ただし、腎臓は重要な血管の近くに位置しているため、これらの血管に腫瘍が癒着している場合には、手術の難易度が高まります。
片方が摘出されたとしても、残ったもう一方の腎臓だけで正常な機能を維持し、日常生活に支障はありません。しかし、手術後に転移するリスクがあるため、定期的なフォローアップが必要となります。
なお、全身状態が悪く、手術に耐えられない犬や、腫瘍が手術によって完全に取り除けない場合には、化学療法などの内科的治療が選択肢となります。これにより、腫瘍の進行を遅らせることや、症状を緩和することを目指します。
予防法やご家庭での注意点
腎臓腫瘍には特定の原因がないため、予防は難しいでしょう。
症状が初期段階ではほとんど現れない、または非常に軽微であるため、早期発見も難しいとされます。しかし、定期的な検査を通じて早期に発見することは可能であり、早期治療への鍵となります。
早期に発見し、手術による完全な除去が可能な場合、予後は比較的良好とされます。
一方で、発見が遅れた場合や腫瘍がすでに他の臓器に転移している場合、予後は不確実となりがちです。転移がある場合は治療の選択肢は限られることが多く、病気の進行を遅らせることが主な目的となります。
特に中高齢になると腫瘍のリスクが高まるため、半年に一度の定期的な健康診断が推奨されます。
健康診断では、腎臓腫瘍だけでなく他の多くの病気も早期に発見できるため、愛犬の健康維持に大きく影響します。
まとめ
腎臓腫瘍は、腫瘍の中でも比較的珍しい病気ですが、発見された場合には深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。
もし愛犬に元気消失、血尿や頻尿、腹部膨満などの症状が見られる場合は、当院までご相談ください。
日頃から愛犬の様子をよく観察し、早期発見・早期治療に努めましょう。
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