犬の僧帽弁閉鎖不全症とは?|小型犬に多い心臓病の症状・原因・治療法を解説
- 2024年11月19日
- 病気について
僧帽弁閉鎖不全症は、小型犬で特に多く見られる心臓病で、加齢とともに発症リスクが高まります。この病気は、犬の心臓病の中でも最も一般的な病気の一つで、早期の発見と適切なケアが健康を守るために欠かせません。
ただし、僧帽弁閉鎖不全症は初期段階では症状が目立たないため見逃されがちです。そのため、定期的な健康チェックがとても重要です。
今回は、僧帽弁閉鎖不全症の症状や原因、そして飼い主様ができる対策についてわかりやすく解説します。
■目次
1.僧帽弁閉鎖不全症とは?
2.僧帽弁閉鎖不全症の主な症状
3.どのような犬が僧帽弁閉鎖不全症になりやすい?
4.診断方法
5.治療法
6.予後と生活の質
7.まとめ
犬の僧帽弁閉鎖不全症とは?
僧帽弁は、心臓の左心房と左心室の間にある弁で、血液が正しい方向に流れるように制御する重要な役割を果たしています。しかし、年齢を重ねることでこの弁が硬くなったり、形が変わったりすると、しっかり閉じることができなくなり、血液が逆流してしまいます。この状態を「僧帽弁閉鎖不全症」と呼びます。
特に小型犬に多く見られるこの病気は、7歳以上の犬の約30%に発症するとも言われています。年齢を重ねるほどリスクが高くなるため、愛犬が中年期を迎えたら一層の注意が必要です。
僧帽弁閉鎖不全症の主な症状
僧帽弁閉鎖不全症の症状は犬によって異なり、初期段階では気づきにくいことが多いです。しかし、以下のような変化が見られたら注意が必要です。
・咳(特に夜間や運動後に出やすい)
・呼吸が苦しそう、または息切れしやすい
・散歩を嫌がる、もしくは疲れやすくなる
・食欲不振
・体重減少
・お腹が膨らむ(腹水の可能性)
これらの症状が 一つでも当てはまる場合 は、早めにかかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。軽い変化に見えても、心臓の病気が進行している可能性がありますので、早期の対応が大切です。
どのような犬が僧帽弁閉鎖不全症になりやすい?
僧帽弁閉鎖不全症の発症リスクには、以下のような要因が関わっています。
<犬種>
チワワ、トイプードル、ミニチュアシュナウザーなど、特に小型犬で多く見られます。
<年齢>
7歳以上の中高齢犬はリスクが高まります。
<体重>
肥満の犬は心臓への負担が増え、発症しやすくなります。
<生活環境>
運動不足の犬も注意が必要です。心臓に適度な刺激が与えられないため、健康に影響を及ぼすことがあります。
また、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは、遺伝的に僧帽弁閉鎖不全症を発症しやすい犬種として知られています。もちろん、上記以外の犬種でも 高齢になると心臓病のリスクが高まるため、どの犬種でも油断は禁物です。
診断方法
僧帽弁閉鎖不全症の診断では、いくつかの検査を組み合わせて、心臓の状態を詳しく確認します。それぞれの検査が異なる側面から心臓の健康を評価するため、総合的な判断が重要です。
・聴診:聴診器を使い、心臓の音に異常な雑音(心雑音)がないかを確認します。
・レントゲン検査:心臓の大きさや肺の状態を調べ、心臓が肥大していないか、肺に負担がかかっていないかを確認します。
・心エコー検査(超音波検査):超音波を使い、心臓の構造や動きを詳しく調べます。弁がきちんと閉まっているか、血液の逆流が起きていないかを確認します。
・血液検査:心臓に負担がかかっている場合、特定のホルモンが分泌されます。このホルモンの数値を調べることで、心臓の負担の程度を評価します。
治療法
残念ながら、現在のところ僧帽弁閉鎖不全症を完治させる方法はありません。しかし、適切な治療を続けることで、症状を和らげ、愛犬が快適に過ごせる生活の質を維持することが可能です。
治療の基本は、心臓への負担を減らし、血液の流れを改善する内服薬の使用です。これにより、心臓の働きを助け、進行を遅らせることが期待できます。
状況によっては、利尿剤などが処方されることもあります。利尿剤は、体内の余分な水分を排出し、肺やお腹に水がたまるのを防ぐのに役立ちます。これにより、呼吸が楽になり、日常生活の負担が軽くなります。
予後と生活の質|僧帽弁閉鎖不全症と上手に付き合うために
僧帽弁閉鎖不全症と診断されても、適切な治療と生活管理を行えば、多くの犬が良好な状態を保つことができます。病気と上手に付き合いながら、愛犬が快適な生活を送れるよう、以下の5つのポイントに注意しましょう。
1.定期的な通院と検査
病気の進行や薬の効果を確認するために、定期的に通院し、獣医師による検査を受けましょう。
2.処方された薬の確実な投与
薬は症状の進行を抑え、生活の質を保つための重要な手段です。指示通りのタイミングで正確に投与することが大切です。
3.適度な運動と休息のバランス
運動は心臓に負担をかけない範囲で取り入れましょう。無理のない散歩と十分な休息を心がけて、体調を見ながら調整してください。
4.塩分控えめの食事
塩分を控えた食事を与えることで、心臓への負担を減らせます。フードの成分表示を確認し、獣医師のアドバイスを受けながら食事を見直しましょう。
5.ストレスの少ない環境づくり
心臓に負担をかけないためにも、静かで安心できる環境を整えることが重要です。生活リズムを一定に保ち、急な環境の変化を避けるようにしましょう。
まとめ
僧帽弁閉鎖不全症は、特に小型犬の中高齢期に多く見られる心臓病です。症状が現れた時には、病気が進行している可能性があるため、定期的な健康診断がとても大切です。少しでも気になる症状があれば、早めに獣医師に相談しましょう。
愛犬とのかけがえのない時間を、少しでも長く、そして幸せに過ごすために、この病気について理解を深め、早期発見・早期治療を心がけましょう。
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