犬の鼻から血が出ているのを見つけたら、きっと多くの飼い主様は驚かれると思います。少量であっても「病気ではないか」「止まらなかったらどうしよう」と不安になりますよね。

犬の鼻血（鼻出血）は、軽いケガから命に関わる病気まで、さまざまな原因で起こります。なかには、鼻の中だけでなく全身の異常が関係しているケースもあるため注意が必要です。

今回は、犬の鼻血の主な原因と、ご自宅でできる対応・受診の目安について解説します。

■目次
1.犬の鼻血の主な原因
2.ご自宅でできる初期対応と観察のポイント
3.動物病院で行う診断と治療の流れ
4.まとめ

 

犬の鼻血の主な原因

鼻血の原因は多岐にわたります。ここでは代表的なものを挙げて、それぞれの特徴を見ていきましょう。

・外傷や異物の混入
散歩中に草の先端や小石が鼻の中に入るなどして、粘膜が傷つき出血することがあります。片方の鼻から出ることが多く、くしゃみを伴う場合もあります。

・鼻炎や副鼻腔炎などの炎症
ウイルスや細菌の感染、アレルギーなどが原因で鼻の粘膜が炎症を起こすと、出血を伴うことがあります。鼻水やくしゃみが続き、片側から出血することが多いのが特徴です。

アレルギーについてはこちらから

・腫瘍やポリープ
特に高齢犬では、鼻の奥にできた腫瘍やポリープが出血の原因になることがあります。慢性的に鼻血が続く場合や、鼻づまり・呼吸音の変化を伴う場合は注意が必要です。

口腔内腫瘍についてはこちらから

・血液疾患（血小板減少・凝固異常など）
血を固める機能に異常があると、わずかな刺激でも鼻血が出やすくなります。歯ぐきや皮膚にも出血が見られる場合は、血液の病気が隠れている疑いがあります。

SFTS（重症熱性血小板減少症候群）についてはこちらから

・中毒や全身性疾患（熱中症・感染症など）
体の中で炎症や臓器の障害が起きると、血管がもろくなり鼻血としてあらわれることがあります。発熱・食欲低下・元気消失など、他の症状を伴う場合は早めの受診が必要です。

熱中症についてはこちらから
食中毒についてはこちらから

このように、鼻血は「鼻の中のトラブル」だけでなく、全身の異常を知らせるサインであることもあります。原因を正しく見極めるためには、全身の健康状態を確認することが大切です。

 

ご自宅でできる初期対応と観察のポイント

突然の鼻血を目にすると、驚いて慌ててしまう方も多いかと思います。まずは深呼吸をして落ち着き、出血の様子を慎重に確認しましょう。

＜初期対応＞

冷たいタオルを鼻先に軽く当て、粘膜を冷やすことで一時的に止血を試みます。

＜NG対応＞

鼻の粘膜を傷つけたり、症状を悪化させるおそれがあるため、次のような対応は避けましょう。

・強く押さえる
・鼻の中を覗き込む
・綿棒などで鼻の奥を触る
・人間用の止血剤や薬を使用する

＜観察のポイント＞

鼻血が出ているときは、出血の状況を冷静に観察することが大切です。

・どちらの鼻から出ているか（片側・両側）
・出血量や色（鮮血・暗赤色など）
・出血の持続時間
・くしゃみや鼻水、呼吸の様子

＜すぐに動物病院へ相談すべき症状＞

以下のような場合は、緊急性が高いおそれがあります。これらの症状が見られた場合は、できるだけ早く受診してください。

・出血が10分以上止まらない
・両方の鼻から出血している
・元気や食欲がない、ぐったりしている
・歯ぐきや皮膚にも出血がある
・呼吸が荒い、咳やくしゃみを繰り返す
・鼻血に発熱や血尿などの症状を伴っている

また、少しの出血でも、繰り返す場合や全身の変化を伴う場合は、思いがけない病気が隠れていることがあります。「大丈夫かな」と感じた時点で早めに相談することが、愛犬の健康を守るいちばんの近道です。

 

動物病院で行う診断と治療の流れ

鼻血が出る原因を特定するためには、鼻の中だけでなく全身の状態をしっかり確認することが大切です。

＜診断の流れ＞

同じ「鼻血」でも、原因によって治療の方法は大きく異なるため、丁寧な検査と見極めがカギとなります。

▼問診と身体検査
まずは、飼い主様からこれまでの経過を詳しく伺い、身体全体の状態を確認します。
いつから出血しているか、どちらの鼻から出ているか、ほかに気になる症状がないかなど、飼い主様が感じている小さな変化も大切な手がかりになります。

▼各種検査
必要に応じて、以下のような検査を組み合わせて行います。

・血液検査：貧血の有無や、血液を固める働きに異常がないかを確認します
・レントゲン検査・CT検査：鼻腔や副鼻腔の奥を画像で詳しく確認します
・内視鏡検査：異物や腫瘍の有無を、カメラで直接観察します

当院では、どの検査も愛犬の負担をできる限り少なくしながら、必要な情報を丁寧に集めることを心がけています。

＜治療の一例＞

検査結果をもとに、原因や症状に応じた治療を行います。

・外傷や炎症の場合：抗生剤や消炎薬などで炎症を抑える内科的治療
・腫瘍や異物が原因の場合：外科的処置による根本的な治療
・血液疾患が関係する場合：点滴や投薬など、全身管理を中心とした治療

当院では、原因を一つひとつ丁寧に探り、必要な検査を組み合わせて診断を行っています。検査結果だけでなく、年齢や体調、生活環境といった背景にも目を向けながら、その子にとって最も負担が少なく、効果的な治療方法をご提案いたします。

 

まとめ

犬の鼻血は、軽い外傷や炎症のこともあれば、血液の異常や腫瘍など重い病気のサインである場合もあります。出血の量や頻度、全身の様子を観察して「いつもと違う」と感じたら早めの相談が安心です。

八幡みなみ動物病院では、鼻血の原因を一つひとつ丁寧に調べ、原因に合わせた治療とケアで愛犬の健康をサポートしています。気になる症状が見られた際は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

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