犬の震えやけいれんは危険のサイン?|原因と対処法について獣医師が解説
- 2024年9月26日
- 病気について
愛犬の手足や体がぶるぶると震えていたり、けいれんを起こしていたりすると、「どう対処したらいいんだろう…」「このまま意識が元に戻らなかったらどうしよう…」と不安になる飼い主様が多いかと思います。
こうした症状は、単なる寒さや興奮によって一時的に引き起こされることもあれば、脳の異常によって現れることもあり、その見極めが重要になります。
今回は、震えとけいれんの違いについてご説明したうえで、一般的な原因や緊急時の対処法を解説します。
■目次
1.震えとけいれんの違い
2.犬の震えの一般的な原因
3.犬のけいれんの一般的な原因
4.症状の観察ポイント
5.緊急時の対処法
6.獣医師に相談すべき症状と状況
7.予防法と日頃の注意点
8.まとめ
震えとけいれんの違い
震えとけいれんは異なるもので、それぞれに異なる原因や症状が関係しています。
<震え>
自分の意思とは関係なく、何らかの理由で一部の筋肉が規則的に振動する状態です。意識ははっきりしていて、呼びかけには反応できます。
原因によっても前後しますが、多くは原因が取り除かれない限り持続します。
<けいれん>
自分の意思とは関係なく、全身あるいは一部の筋肉が収縮することで、手足が突っ張ったままになったり、顔がピクピクと動いたりします。けいれん中は、意識を失っていることも多々あり、その場合は呼びかけに反応できません。
通常は1~2分ほどで治まりますが、5分以上続くこともあります。
犬の震えの一般的な原因
犬が震えているケースでは、以下のような原因が考えられます。
・寒さ
寒さを感じると皮膚の筋肉を振動させて体を温めようとします。暖かい場所に移動したり、毛布をかけてあげたりすることで震えは自然と治まるでしょう。
・加齢
年齢を重ねると、筋力の低下や関節の問題から震えやよろめきが見られることがあります。特に、立ち上がる際や長時間座っていた後などによく見られます。
・恐怖
強いストレスや恐怖を感じると、震えることがあります。雷の音や知らない場所、他の動物などが原因となることが多いですが、恐怖の対象がなくなれば次第に落ち着いていきます。安心できる環境を整えてあげるとよいでしょう。
・低血糖
低血糖によっても震えが生じます。特に、糖尿病の治療でインスリンを投与している犬や、膵臓の腫瘍がある犬に見られることがあります。
また、キシリトールを含むガムなどを誤食した際も同様の症状が現れるため、注意が必要です。
犬のけいれんの一般的な原因
震えとは異なり、けいれんが見られる場合には、いくつかの特定の原因が考えられます。以下に、その代表的なものを紹介します。
・てんかん
脳の神経に異常が起こることで発作が発生し、けいれんにつながります。軽度のてんかん発作では、顔の一部や皮膚がピクピクと動くだけで済むこともありますが、重度になると意識を失い、手足が硬直して突っ張り、横になって泳ぐような動きが見られることもあります。
てんかんの原因がはっきりしないことも多いのですが、場合によっては脳腫瘍が関与しているケースもあるため、しっかりと診断を受けることが大切です。
・中毒
犬はブドウやレーズンなどの有害な食べ物を誤って食べてしまうと、急性腎障害を引き起こし、体内に有害な物質が溜まってしまいます。
これが尿毒症という状態に発展し、脳に影響を与えてけいれんを引き起こすことがあります。
・熱中症
暑い日に長時間屋外で過ごした場合や、体温調節が難しい環境にいると、重度の熱中症を引き起こすことがあります。
熱中症が進行すると体が脱水状態になり、脳への血液供給が不足して意識を失い、けいれんを引き起こすことがあります。
症状の観察ポイント
愛犬に震えやけいれんが見られた際には、すぐにパニックになるのではなく、まずは落ち着いて以下のポイントを確認してみてください。
・症状の持続時間:震えやけいれんがどのくらい続いたかを確認しましょう。5分以上続く場合は、すぐに動物病院への相談が必要です。
1~2分程度であれば、経過を見守ることもできますが、短時間でも頻繁に起こる場合は注意が必要です。
・頻度:症状が一時的なものか、1日に何度も繰り返しているのかを確認します。繰り返し起こる場合は、深刻な原因が潜んでいる可能性もありますので、早めの受診をお勧めします。
・意識の状態:震えやけいれん中に、愛犬が呼びかけに反応するかどうかを確認しましょう。意識がはっきりしている場合と、意識を失っている場合では原因が異なることがあります。
・体の部位:症状がどの部分に現れているのかも重要です。背中や肩など体の一部、顔の一部、手足全体、もしくは全身にわたっているかをしっかり観察してください。
・前後の状況:症状が現れる前に、誤食や暑い中での散歩、ストレスを感じる環境にいたかどうかもチェックしましょう。
緊急時の対処法
愛犬がけいれんを起こした際には、冷静な対応が必要です。以下の対処法を参考に、落ち着いて行動しましょう。
・安全な環境の確保
けいれん中は、愛犬が家具や壁にぶつかってケガをしないよう、周囲に危険なものがないか確認し、安全な環境を整えましょう。柔らかいクッションや毛布で周りを守ってあげると安心です。
・見守る
けいれんが治まるまでは、愛犬を無理に動かさず、そっと見守りましょう。押さえつけたり、口に何かを入れようとしたりすると、誤嚥やケガにつながる恐れがあるため、触れずに静かに待つことが大切です。
・時間の記録
けいれんが始まってから終わるまでの時間を測っておくと、獣医師の診察時に重要な情報となります。特に、5分以上続く場合は、速やかに動物病院に連絡しましょう。
・ビデオ撮影
けいれん時の細かな体の動きは、口頭では伝えるのが難しいことがあります。可能であれば、その様子をビデオで撮影しておくと、診察時に獣医師が正確に状態を把握しやすくなります。時間の記録も、ビデオと一緒に行うとよいでしょう。
ただし、これらの対処法はあくまで応急処置です。けいれんが見られた際は、できるだけ早く動物病院に連れていき、獣医師の診察を受けることが必要です。
獣医師に相談すべき症状と状況
以下の状態は特に危険ですので、すぐに動物病院を受診しましょう。
<長時間のけいれん>
けいれんが5分以上続く場合、原因に関わらず脳に大きなダメージを与える可能性があります。多くの場合、意識がないこともあり、すぐに原因を突き止めて治療を始める必要があります。
<繰り返す発作>
特にてんかんの場合、発作が1日に何度も繰り返されることがあります。このような場合、発作と発作の間隔がどんどん短くなり、最終的には意識が回復する前に次の発作が始まってしまうこともあります(てんかん重積)。
この状態は非常に危険で、命に関わることもありますので、早急な治療が必要です。
予防法と日頃の注意点
震えやけいれんの原因の中には、ご家庭での対策で予防できるものもあります。
まず、定期的な健康診断を受けることが大切です。健康診断を通じて、脳腫瘍のような重大な病気を早期に発見し、治療を始めることができます。特に症状が出る前に発見できれば、治療の選択肢が広がり、結果的に愛犬の健康を守ることにつながります。
愛犬のストレスを緩和することも重要です。犬が日常的に感じるストレスの要因をできるだけ取り除くことで、震えを予防できるだけでなく、愛犬の生活の質(QOL)も向上します。
さらに、家庭内にある中毒物質の管理にも気をつけてください。ガムやブドウ、レーズンといった犬に有害な食べ物は、誤食を防ぐために、必ず愛犬が届かない場所に保管するようにしましょう。
まとめ
震えとけいれんは似たように見えることがありますが、それぞれ原因や対処法が異なります。震えは、環境の変化やストレスなどで軽減できることが多いですが、けいれんが起きたときは特に注意が必要です。
特にけいれんが長引く場合は、すぐに動物病院へ相談し、早めに対応することが大切です。
日頃から愛犬の様子をよく観察し、少しでも異変を感じたら早めに対応しましょう。
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