猫の甲状腺機能亢進症は、特に高齢の猫に多く見られる疾患であり、適切な治療と管理により、愛猫の生活の質を大きく改善できる可能性があります。この病気は、甲状腺ホルモンの過剰な生産によって引き起こされ、体全体に影響を及ぼします。
甲状腺ホルモンは体の代謝を調節するため、そのバランスが崩れると、食欲増進、体重減少、行動の変化など、さまざまな症状が現れることがあります。

今回は猫の甲状腺機能亢進症について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。

 

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

原因

甲状腺機能亢進症は、主に甲状腺の腫瘍化や過形成によって、甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、新陳代謝が異常に高まる病気です。

具体的な原因はまだ完全には解明されていませんが、加齢、食事、飼育環境、遺伝的要因などが複合的に関わっていると考えられており、高齢の猫に代表的な内分泌系の疾患で、特に10歳以上の猫に多く見られます。

 

症状

最も典型的な症状は、代謝が高まるため食欲旺盛でありながら体重が減少します。
他にも、多飲多尿、落ち着きのなさ、攻撃性の増加、毛並みの悪化、眼の異常な輝き、下痢や嘔吐などが挙げられます。

さらに、甲状腺機能亢進症は心筋症や高血圧、網膜剥離などの深刻な合併症を引き起こすリスクがあります。

診断方法

診断には下記のような検査を行います。

■触診
診断の最初のステップとして、猫の喉の近くに位置する甲状腺を触診します。甲状腺機能亢進症の猫では、甲状腺が通常よりも大きくなり、腫れていることが多いため、触診によって異常が感じられることがあります。

■血液検査
甲状腺ホルモンのレベルを測定する血液検査は、甲状腺機能亢進症の診断において非常に重要です。この検査では、特にT4（チロキシン）のレベルが注目されます。甲状腺機能亢進症の猫では、T4レベルが正常範囲を超えて高くなることが一般的です。

■追加検査
全体的な健康状態を評価し、甲状腺機能亢進症による可能性のある他の合併症を特定するために、以下の追加検査が行われることがあります。

・一般血液検査：全体的な健康状態と臓器機能を評価します。
・尿検査：腎機能の状態を評価します。
・血圧測定：高血圧の有無を確認します。
・X線検査やエコー検査：心筋症など、甲状腺機能亢進症に関連する合併症の診断に役立ちます。
・眼科検査：網膜剥離など、目に影響を及ぼす合併症の検査を行います。

これらの検査結果を総合して、獣医師は甲状腺機能亢進症の診断を下します。

治療方法

治療方法は、病気の進行度や猫の全体的な健康状態、飼い主様の状況などに応じて異なります。主に以下の治療方法を組み合わせて使用します。

・抗甲状腺薬物療法
甲状腺ホルモンの生成を抑制する薬を使用します。薬物療法は甲状腺機能亢進症の症状を効果的に管理できますが、薬を生涯にわたって毎日投与する必要があります。また、副作用に注意し、定期的な血液検査によるモニタリングが必要です。

・食事療法
ヨウ素制限食を使用した食事療法も、甲状腺機能亢進症の一般的な治療の一つです。甲状腺ホルモンの生成にはヨウ素が必要であるため、ヨウ素の摂取量を制限することでホルモンの生成を抑えられます。

・手術による甲状腺摘出
薬物療法と食事療法でコントロールすることが難しい場合には、甲状腺を摘出する手術を行います。
甲状腺摘出手術は、過剰にホルモンを生成する甲状腺組織の一部または全部を外科的に除去する方法です。手術は即効性があり、適切に行われた場合には高い成功率を持ちます。しかし、手術には全身麻酔が必要であり、特に高齢の猫や他の健康問題を抱えている猫にはリスクが伴います。

他にも、甲状腺機能亢進症によって引き起こされる可能性のある合併症、例えば心筋症や高血圧などの管理も重要です。

予防法やご家庭での注意点

甲状腺機能亢進症は、その発生メカニズムが完全には解明されていないため、特定の予防方法は存在しません。
しかし、高齢猫の定期的な健康診断により、病気の早期発見と治療が可能になります。飼い主様は、愛猫の食欲や体重、活動レベルの変化に注意を払い、異常が見られる場合は速やかに獣医師に相談することが重要です。

まとめ

猫の甲状腺機能亢進症は、早期発見と治療の開始が愛猫の健康を守るためには非常に重要です。
飼い主様は、日常的に愛猫の様子を注意深く観察し、愛猫が快適で健康的な生活を送れるようサポートしていきましょう。

 

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