犬の僧帽弁閉鎖不全症について|初期症状がほとんどない心臓の病気
- 2024年1月30日
- 病気について
僧帽弁閉鎖不全症はトイ・プードルやシーズー、ヨークシャー・テリア、パピヨンといった小型犬やキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルでの発生率が高い弁膜症です。
今回は、犬の僧帽弁閉鎖不全症について、症状や治療方法、予防方法などを解説します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
原因
僧帽弁閉鎖不全症とは、僧帽弁の閉鎖が不完全になることで、本来は全身へ送られるはずの血液の一部が左心房に逆流してしまうことで、心臓から十分量の血液を送り出せなくなる病気です。
主な原因は加齢です。早くて5歳くらいから心雑音が聴かれることもありますが、一般的には6歳くらいから有病率が高くなります。
しかし、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは遺伝的に発症しやすく、例外的に若齢でも発生します。
症状
軽症では心雑音が聴取や画像診断上での異常以外には症状がみられません。
そして時間をかけてゆっくりと進行していき、次第に痰が絡んだような咳が出る、疲れやすくなる、食欲が落ちるといった症状がみられるようになります。
重度になると咳が増える、呼吸が苦しそう、チアノーゼ(舌の色が紫色)などの症状が現れ、最終的に肺水腫によって呼吸不全を起こし、命に関わる状態に至ります。
心臓と密接な関係をもつ腎臓の機能にも影響し、腎不全を発症することも多いです。
診断方法
聴診によって心雑音が聴取された場合には詳しい検査を行い、総合的に診断します。
・X線検査:心臓のサイズや肺水腫の有無などを確認
・超音波検査:僧帽弁の状態や血液の逆流の有無などを確認
・血液検査:全身状態を確認
・心電図検査:不整脈の有無を確認
・血圧測定:高血圧の有無を確認
治療方法
心雑音があっても心拡大がない場合は、体重管理や運動制限を行ったりサプリメントを使ったりしながら経過観察します。そして1年に1〜2回くらいのペースで検査を行い、心拡大が認められた場合には心臓薬の服用と食餌療法を開始します。
また、肺水腫を起こしている場合は緊急性が高いため、入院下で集中治療を行います。ICUで酸素吸入を行いながら、心臓薬や利尿剤、鎮静剤などを投与します。
完治のためには外科手術が有効ですが、手術を行っている病院は限られています。受診のためには紹介状が必要になりますので、外科手術をご希望の場合はまずはご来院のうえご相談ください。
予防法やご家庭での注意点
残念ながら予防は難しいものの、早期発見が重要です。
また、塩分を控えたり適正体重をキープしたりして、心臓に負担がかからないよう気をつけましょう。
まとめ
当院は予約優先となっておりますが、救急診療にも可能な限り対応いたします。そのため、肺水腫が疑われる場合には、夜間や時間外の対応についても、まずはお電話にてご相談ください。
また、症状が出る前に治療を開始することで元気で過ごせる時間も長くなります。そのため、若齢の場合は1年に1回、7歳を過ぎたら6ヶ月に1回を目安に健康診断を受けることをおすすめします。
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<参考>
https://ozaki-ah.com/images/report/pdf/2019/11/05.pdf