2026年6月05日

「トイ・プードルはパテラになりやすいと聞いて心配」「最近、後ろ足をかばうような様子が気になる」——そのように感じられている飼い主様もいらっしゃるかもしれません。
「膝蓋骨脱臼(パテラ)」は、小型犬に比較的よく見られる関節のトラブルのひとつです。とくにトイ・プードルでは体のつくりや生活環境の影響を受けやすく、気づかないうちに負担がかかっていることもあります。
ただし、すべてを防げるわけではないものの、日常のちょっとした工夫で関節への負担を減らせるケースもあります。また、早めに状態を把握しておくことで、その子に合ったケアや対応を選びやすくなります。
そこで今回は、膝蓋骨脱臼の基本的な仕組みや症状、受診の目安、ご家庭でできる予防のポイントについて解説します。
膝蓋骨脱臼(パテラ)とは|トイ・プードルに多い理由
膝蓋骨脱臼とは、膝のお皿(膝蓋骨)が本来あるべき位置から外れてしまう状態を指します。
通常、膝のお皿は太ももの骨の溝に沿ってスムーズに動くことで、足の曲げ伸ばしができています。しかし、このお皿が外れると関節の動きが不安定になり、違和感や歩きにくさにつながります。
トイ・プードルに多い理由としては、以下のような要素が関係しています。
・骨格の構造的な特徴
・筋肉量や関節の安定性の個体差
そのため、生まれつきの要因と生活環境の両方が影響していることが少なくありません。
<よく見られる症状>
初期の段階では分かりにくいこともありますが、次のような様子が見られることがあります。
・後ろ足を一瞬浮かせる
・スキップのような歩き方をする
・ときどき足を上げる
・進行すると常に外れている状態になる
「少し変かな?」と感じる程度の変化でも、体からのサインである可能性があります。
グレードごとの状態と受診の目安
膝蓋骨脱臼は、状態に応じていくつかの段階(グレード)に分けて考えられます。
▼グレードⅠ
普段は正常な位置にありますが、触診で外れることがあります。症状はほとんど見られないことが多い段階です。この段階では、予防や生活環境の見直しがとても重要になります。
▼グレードⅡ
日常の中でときどき外れますが、自然に元に戻る状態です。足を浮かせる様子が見られることがあります。違和感のサインが出始めるため、生活改善とあわせて一度相談しておくと安心です。
▼グレードⅢ〜Ⅳ
常に外れている、もしくは戻りにくい状態で、歩き方にも明らかな変化が見られます。この段階では、しっかりとした評価と治療の検討が必要になります。
膝蓋骨脱臼は「症状が軽い=問題ない」とは限りません。グレードが低いうちに状態を把握し、適切に対応していくことが大切です。迷われた場合は、早めに確認しておくことで今後の選択肢を広げることにつながります。
ご家庭でできる予防と悪化を防ぐポイント
膝蓋骨脱臼は完全に防ぐことが難しい場合もありますが、日常の過ごし方によって関節への負担をやわらげることは十分に可能です。
<環境の工夫>
まず見直したいのは、足元や段差などの生活環境です。フローリングは滑りやすく、踏ん張る動きで膝に負担がかかりやすくなります。マットやカーペットを敷くことで安定した動きにつながります。
また、ソファやベッドの昇り降りも負担の原因になります。ステップを設置するなど、無理のない動きができる環境を整えてあげましょう。
<体のケア>
関節の安定には体重と筋肉のバランスが重要です。適正体重を維持しつつ、無理のない運動で筋力を保つことが基本となります。
あわせて、爪や足裏の毛の状態も見直しておきたいポイントです。滑りやすい状態を防ぐことで、関節への余計な負担を減らすことができます。
<日常で意識したいこと>
急な方向転換や滑りやすい動きは、膝への負担につながります。できるだけ落ち着いた動きができる環境を意識してあげましょう。
また「足を浮かせる」「歩き方が少し違う」といった小さな変化も見逃さないことが大切です。こうしたサインに早く気づいてあげることが、悪化の予防につながります。
大切なのは「完璧に防ぐ」ことではなく「負担を減らす視点で日常を整えていく」ことです。日々の小さな工夫の積み重ねが、愛犬が長く元気に歩くための支えになります。
動物病院でできること|予防相談という選択肢
ご自宅での工夫に加えて、動物病院で現在のその子の状態や、それに合わせた予防や管理の方向性を客観的に把握しておくことも大切です。
・状態の評価とグレードの確認
診察では、歩き方や姿勢を確認しながら関節の動きを評価し、膝蓋骨の状態を把握します。現在どの段階にあるのかを知ることが、今後の対応を考えるうえでの出発点になります。
・生活環境への具体的なアドバイス
評価結果をもとに、床の滑り対策や段差の使い方、運動量など、ご家庭で見直せるポイントを具体的にご提案します。生活の中での工夫によって、症状の進行をゆるやかにできることもあります。
・必要に応じた治療の選択肢
状態によっては、痛みのコントロールや関節のサポートを目的とした治療を検討することもあります。ただし、すぐに大きな治療が必要になるとは限らず、経過観察で安定するケースも多く見られます。
<早めに相談することで得られるメリット>
早い段階で相談しておくことで、次のようなメリットが期待できます。
・症状の進行を防ぎやすい
・生活の工夫で改善できる可能性がある
・将来的な関節への負担軽減につながる
特に初期の段階では、日常の過ごし方が大きく影響します。「今のうちにできること」を整理しておくことが重要です。
八幡みなみ動物病院では、膝の状態を丁寧に評価したうえで、その子に合ったケアや生活の工夫をご提案しています。無理に手術をすすめるのではなく、予防や経過観察を含めた選択肢を一緒に考えていくことを大切にしています。「まだ受診するほどではないかも」と迷われるときこそ、どうぞお気軽にご相談ください。
まとめ|“今できること”で愛犬の足を守る
膝蓋骨脱臼はトイ・プードルに多く見られる疾患ですが、日常の工夫によって関節への負担を軽減することにつながります。
「少し気になる」という段階でも、その背景には関節への違和感が隠れていることがあるため、症状が軽いうちに状態を把握し、生活環境を整えていくことで、将来的な負担を減らせる可能性があります。
また、ご家庭での対策だけでなく、動物病院で現在の状態を確認し、その子に合ったケアを一緒に考えていくことも大切です。「これくらいで相談してもいいのかな」と迷われる段階でも、まずは一度ご相談ください。
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